Short dream

□Affettuoso 愛情を込めて
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「名無しさん!」


『あ、エース!どうしたの?』


俺は毎日こいつに会いに行く。
その理由は、たぶんこいつのことが好きだから。でも、その気持ちを伝えようとは思っていないんだ。

「お前に会いたくなってよぉ、探した」


『そっか!私も今からお昼寝しようと思ったからエースを探そうとしてたの!』


「じゃあ甲板行くか」


『そうだね!枕持ってくる!』


こいつも、きっと俺のことが好きなんだな・・・とは思っている。
それなら何で気持ちを言わないのか・・・それはたぶんこの曖昧な時間が実は好きだからだ。







枕を二つ持ってきた名無しさんは、まるで恋人がそうするように、枕を二つくっつけて並べる。周りから見たらきっと恋人同士に見えるだろうな。


横になって寝転ぶと、名無しさんはすぐに寝息を立て始めた。


名無しさんは寝るが、俺はいつも寝ない。
名無しさんの髪を触りながら、いつもその寝顔を眺めるんだ。



名無しさんが起きるまでずっと傍を離れない。
起きた時に一番に俺を見て欲しいから。













その夜、サッチと食堂で飲んでいた。


「なぁエース、ほんとに名無しさんと付き合ってねぇのか?」


「あぁ、付き合ってねぇ。」


「言えないのか?・・・いや、言わないのか。」


全く、鋭いやつだなサッチは。




そうだ。言えないし、敢えて言わない。
それは、この時間が好きだから。

でも、付き合って自分のものにしたいとも思う。

矛盾してるのは自分でもわかる。でも、どうしたいかなんて俺にもわからない。



『あ、エース!やっぱりここにいた。』


「名無しさん・・・どうした?」


『あのね、今日不寝番だから一緒に見張り台に行こうと思って・・・でも、邪魔しちゃったね・・・。』


そう言って名無しさんはサッチを見る。



「俺はいいからよ、行ってやれよエース!」


「あぁ、すまねぇな。」


名無しさんの手を握って食堂を出た。
そのすぐあとに、「ほんと、恋人みてぇだな」とサッチは呟いた。






『エース、ごめんね・・・私の、せいだよね』


「いや、気にするなよ。俺もそろそろ名無しさんに会いたかったしな!」


『でも・・・ほんとにごめんなさい・・・。』


下を向いて明らかにシュンとする名無しさん。
俺はそんな名無しさんも可愛いと思った。


名前を呼ぶと、名無しさんはすぐに俺を見上げる。その名無しさんの表情があまりに可愛すぎて俺は思わずキスをしてしまった


『・・・!』


「・・・あ、わりぃ・・・。
名無しさんが可愛くてつい。」


『エー・・・ス・・・?』


「すまねぇ。
・・・嫌だったか・・・?」


『え、?ううん!そんなことないよ。
すっごく嬉しい!』



いつも見張りの時は一緒で、いつも一緒に見張り台に上がる。ただ、いつもと違っていたのは俺の手と名無しさんの手が繋がれていると言うこと。





見張り台に着くと想像以上に寒かった。
だから俺は後ろから名無しさんに抱きついて座る。




『ねぇ、エース。』


「ん?」


『エースは、私のこと好き?』






「・・・あぁ、好きだな。」

『ふふっ、知ってたよ!』

「名無しさんは、俺のことが好きなのか?」



『うん、好きだよ!』

「知ってた」




そして、自然とまた唇を重ねる。




『あ、エース!私まだ告白されてない!』



「あぁ、そうだったな。」



そして、真剣な顔をした。



「名無しさん、好きだ。





俺と付き合ってくれるか?」


『・・・はい!』



知っていた名無しさんの気持ち、知られていた俺の気持ち。
それが重なり合うこの瞬間もまた、俺にとってはすごく嬉しいものだった。






今までの時間を埋めるように何度も何度も口付ける。

でも、俺たちには今更で。
でも、俺たちにはこのシチュエーションが柄にもなくて。



お互いの額を合わせて笑いあった。




『ふふっ、今更だね!』

「今更だな」




『やっとエースに気持ちを伝えられて良かったよ!』


そう言って俺に笑いかける名無しさん。
ほらな、これだからこいつはやめられない。





いつだって俺を夢中にさせるんだ












あなたに捧げる
Affettuoso〜愛情をこめて〜



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