Short dream
□・・・。
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私はこの酒場でアルバイトをしている。
酒場で働くと、海賊なんかも相手にするのは日常茶飯事で・・・ナンパされるのなんてもう息するぐらい当たり前なんです。
『いらっしゃいまー・・・せ?』
「なんで疑問形なんだ。俺は客だぞ」
『失礼いたしました・・・また来やがったんですか。』
「あぁ、お前に会いにな」
『こちらの席にどうぞ』
「無視か。照れることはないんだぞ。」
『・・・ご注文は?』
「名無しさんに決まっているだろう。毎回言わせるつもりか。」
『はい、ビールでいいですね。少々お待ちください。』
「・・・」
この人は最近島に停泊しているハートの海賊団の船長・・・らしい。
毎日この酒場に来て私を注文して、そして閉店までずっと私を睨んでる。
いや、正確には毎日毎日飽きもせずずーっと私を目で追っている。
正直怖いぐらいだ。
毎日「俺の船に乗れ」と勧誘されている。
理由を問うと、私に惚れたらしい。
海賊の言うことなんて信用できないと断ると、毎日この酒場に来るようになった。
『はぁ・・・。』
「何だ、俺のことが気になるのか!」
『気になるというか、もううんざりしているんです。』
「そうか、もうすぐ惚れる予定なんだな。」
『いえ、違います。』
「名無しさん、そのミニスカートいいな。グッとくる。」
『セクハラです。』
「名無しさん、お前俺のことが嫌いなのか。」
『はい。』
「船には乗る気がないのか。」
『はい。』
「ここに来るのは迷惑なのか。」
『はい。』
「じゃあ俺と付き合うか。」
『は・・・いいえ、結構です』
「チっ」
・・・
危なかった。
適当に返していたら危うくめんどくさいことになりそうだった。
中房に行こうとする所を腕を引かれ、船長さんの隣の椅子に無理やり座らせられた。
『あの、仕事に戻りたいので離してください。』
「おい、お前の仕事は俺の相手だろう・・・なぁ、店長。」
船長さんはそう言うと、店長に札束をどさっと渡した。
「・・・!えぇ、その通りです!名無しさん、心して仕事しなさい!」
(店長・・・私はあなたのことを信じてたのに!)
もう店長の目はベリーのマークに染まっていた。
「だそうだ名無しさん。諦めるんだな。」
『・・・。はぁ』
「何だ、そんなに俺がカッコイイか。」
『違いま・・・せんね。確かにカッコいいのは認めます。』
「・・・!
名無しさん!!そうか、とうとう俺のこと『いえ、違います。』
あーあ。
店長はもう金に目が眩んでるし・・・
この船長さんは頭が残念だし・・・
めんどくさいわー!
「おい店長。こいつ買いたいんだが、いくら出せば攫っていいんだ。」
金出したら"攫う"とはニュアンスが違うんじゃないか・・・?
「いえ、もうあんなにお代をいただいたのでどうぞ!」
『・・・。』
いやいや、それはないだろう・・・店長。
「ふっ、名無しさん。さぁ行くぞ。」
船長さんは立ち上がり、放心状態になった私を担ぎ上げてテイクアウトしていった。
私って一体・・・。
「今日から俺の女という名の仲間になった名無しさんだ。」
『・・・。』
「「(そうか、無理やり連れてこられたのか・・・)」」