Short dream
□不確定性原理の出会い
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科学においては例外が一つでも発見されれば、その法則は無価値なものとなる。
すると、ものは変化するのが実態であるから、すべて確実にこうだとは言い切れない。
『離してください!』
「お嬢ちゃん、暴れるな。おとなしくしてれば痛くしねぇからよ!」
『っぃや! やだ!』
はぁ・・・
大して強くもないくせにイキがりやがって
俺はこう言う恥さらしな奴が嫌いだ。
「ベポ、先に船に帰ってろ。」
「アイアイ、キャプテン!」
これからこの女を助けるのはただの親切
そのあと、あの男をバラバラにするのはただの暇つぶし
すべてが偶然
たまたま、前を通りかかっただけ。
たまたま、あの男にイライラしただけ。
たまたま、その女を自分のモノにしたいと思っただけ。
ただそれだけのこと
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『ロー?なにボーッとしてるの?』
「いや、考え事をしてただけだ。」
『もしかして、私のこと?』
そう言って名無しさんは笑った。
「・・・あぁ、強ち間違いではない。」
恋人ができるまでの過程を考えると、そこに「偶然」が介在しているということが言える。
「島の滞在中に、たまたま助けたのが名無しさんだった」と言う
たまたまの「偶然」
即ち、不確実な要素がある。
これだから、人生は面白いのかもしれない。
「あの時名無しさんを助けたのが俺でよかったと思っただけだ。」
『え・・・!急にどうしたのー?
なんか、今日のロー、変だよ!?』
「俺はお前に会えてよかったと思ってる。
名無しさんは、どうなんだ?」
『なっ・・・!そんなの、当たり前じゃん!』
この恋は、不確定性原理が導いた偶然という名の必然だった。