Short dream

□片思い条約
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俺と名無しさんには、お互いに約束した条約がある。
その名も、【片思い条約】

俺と名無しさんには、それぞれに想っている異性がいる。その人と結ばれるまで、協力してお互いに頑張ろうと言う、いわゆる同盟だ。





第1条
一日一回、今日の報告

『サッチ、聞いて!
今日ね、好きな人と長く話したの!いつもちょっとしか一緒にいれなかったから、すっごく楽しかったの!』

そう。
毎日一回のこの報告だけがしゃべれる機会だった。
でも今日はたまたま食堂で一緒になって・・・それから、二人で座っておしゃべりできた。

サッチの好きな人は知らない。
だって、私も教えるはめになったら・・・バレちゃうじゃない・・・本当はサッチが好きなんだってこと。

でも、サッチはきっとナースのリサーナのことが好きなんだと思うの。
毎日しゃべってるとこ見るんだもの・・・。





「へぇ・・・よかったじゃねぇか!
これで一歩前進か?!」

『まだ何とも言えないんだー・・・
サッチは?今日どうだったの?!』

「俺も実は今日長くしゃべってたんだ!」


ほらね、やっぱり。
あそこの船尾のところでしょう?
今日も、仲良く二人でしゃべってるとこ見たもの。

『サッチも?!よかったじゃない!
付き合うまで秒読みなんじゃない?』


そう言って笑ってみせた。

嘘。
だって、笑えないもの。
心は、一面水浸しよ。


「実はさ、明日にでも告白しよう思ってんだ!」


『え・・・?』



ウソ
うそ!!
嘘って言ってよ。


「まだ早いかなーとは思ったんだけどよぉ・・・
その・・・ちょっといけそうな気がすんだ!」



そっか・・・。
『頑張って、サッチ!』

(嫌、やめてよ。)


「おう!サンキュー!」


そして、部屋に帰った。



『ぅ・・・っヒック・・・』


今は、誰もいないからいいよね。

誰にも、聞こえないように泣くから。

今だけ、許してください。


第2条
辛いことがあっても泣かない

その次の夜。

また、いつもの場所で待っていた。


『あ、サッチ・・・』


「どうした?浮かない顔してっけど。」


『うん、あのね・・・
私、失恋しちゃったみたい。』


あなたは、嬉しそうね。
きっと、告白がうまくいったんでしょ。


「おい、名無しさん。泣きそうじゃねぇか。」



誰のせいだと思ってるのよ。



『そうね。

今だけ・・・今だけ許してくれない?』


「そうはいかねぇよ」


第3条
泣いたら罰ゲーム


「泣いたら、お互いの一生の下僕
んで、一生逆らわない・・・だろ?」


『そうだったわね・・・。
でもね、私・・・サッチの下僕ならなってもいいから』


そう言った私の頬には、一筋の涙が流れた。




必死に涙を堪えても
何度も何度も拭っても、溢れ出した私の涙は止まってくれなかった。



「あーあ・・・泣いちまったな。」



そうよ。で
も、下僕にでもなって
それでもあなたの傍にいれるなら


それはそれでいいのかもしれない。


「名無しさん、罰ゲームだ。」


『うん、なんでも言って。』


この気持ちを忘れるぐらい辛いことを。





「まず、最初の罰だ。







名無しさん、俺の女になれ。」


『う、ん・・・え?』


「二つ目。
これからは、毎日遠慮せず俺に話かけろ。
いいか、毎日だ。」


『・・・』


「そんで、三つ目。





いい加減、泣き止めよ!」


そう言って、サッチに抱きしめられた。

『う、そ・・・』


「いいか、拒否権はないぞ!
お前が誰を好きだか知らねーが・・・これからは下僕でもなく、俺の女だ。


返事は?」


それは、夢?
これは、現実?



『・・・はい!』







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それはね、片思いじゃなくて
単なる両思いでした



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