S・novel
□君への気持ちが溢れる瞬間
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どうしてだろう…、と。
一年に一度、必ず巡ってくる私にとっての恒例行事
どうしてなのだろう。
なぜだかこの日は堪らなく泣きたくなる。
胸の奥底からなにかがあふれでてくるような
圧迫死してしまいそうに苦しくて、
その蓋を取り去ってしまいたくなるような息苦しさを覚えるのに
もし、その蓋を、…この気持ちの正体を知ってしまったならば、
私はもう二度と後戻りできなくなってしまうような
私にとって一年に一度、
必ずやってくる恒例行事………10月10日
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朝目覚めたとき、"またか…。"と思った。
胸を押し潰してしまいそうな圧迫感
心臓が、その圧迫感に抗うように激しく脈打つ
頬を伝う涙が私の鎖骨の辺りまで侵食を進めたとき、私の脳はゆっくりと、くっきり、その違和感を叩き出した。
『…な、に…?いまの…?』
真っ白な女性
まるで、存在そのものから色が抜き取られてしまったかのような真っ白な女性
髪も肌もなにもかもから、色が根刮ぎ奪い取られてしまったかのような…
でも、なぜだかわからないが、…その女性はかつてジブンダッタモノなのだと確信ができた。できてしまった。
胸が苦しかった。
すごく、怖かった、
でもきっと怖いのは、苦しいのは、それが原因ではなかった。
これ以上知ってはいけない。
なのに私はあの人に、アノヒトガ
頭のなかのカスミが少しずつ解けだして、それと同時に止めどなく溢れでてきた愛しさはその正体をあたしに知らしめた。
『…、…』
ぎ ん と き
唇がゆっくりとその名を刻んで
あぁ、やっと思い出した。
何百年、何千年、それよりももっと昔
銀時という愛しい人は、あたしを残して死んだんだ。
けれど銀時というなの愛しい呪いは、あたしを逃がしてはくれず、銀時によく似た真っ白な姿をあたしに与え、あたしの命をも奪ったのだ。
どうして忘れていたのだろう。
どうして忘れられていたのだろう。
こんなにも愛しいあの人を
誰よりも、何よりも代えがたく、愛したあの人を
『…あーぁ。知っちゃった。』
どうしてくれるのだろう。
おかげであたしの青春はおじゃんだ。
もうどうやってあなた以外の人を愛せるかわからない。
強いあなたも、弱いあなたも
あなた以上なんて存在しない。
あなたの呪いはどれだけあたしを蝕んで、捉えてしまうのだろう
あたしの中にはあなたの白以外の色が未だに存在しないだなんて
『…見つけてやるんだから。バカヤロー』
このままあたしを縛り付けたままあなただけが逃げ切るなんて許さない
『延滞料金もきっちり払ってもらって、あたしの青春返してもらうんだから』
だから待ってなさい。
あたしの愛しい人
君へ想ひが溢れる瞬間
(10月10日)
(あなたに愛を届ける特別な日)
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