Slll・novel

□足りない言葉の埋め合わせ
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喧嘩をした。


というわけでもないが、真選組一番の腕を持つ剣士、やら、ドS星の皇子、やら、となにやら名前の多い彼、つまりは沖田総悟と私は今、互いに口をきき合っていない。

こうなった原因はこれといって思い付かないが、強いて言うならば、嫉妬、なのだろう

いや、別に?あんな顔だけで性格最悪で、鬼畜だし優しくないし、女の子になんかモテるし、普段はあんななのに剣を持つとかっこいいところとか、てゆーか普段からかっこいいし、なんだよくそ。ばか。
とにかく、あんなドSバカなんて全ッッッッッッ然好きじゃないしぃ?
ってゆうかやっぱり妬いてなんかいません〜
なんかの気のせいだ、ばかコノヤロー





……デレデレしやがって、くそ。ケッ




『ってゆうか、雨のせいでずぶ濡れだしっ、っうぅ〜!!!!!腹立つううううううう!!!!』


突然降りだしてきた雨も相まって、私の機嫌は今すこぶる悪いのである。
こんなことなら、気分転換だなんて言って散歩に出掛けたりせず、大人しく過ごしていればよかった…

突発的な自分の行動をこれほどまでに恨んだことはない。


『…、』


そして、もうひとつ。
気付けばこの場所に足を運んでしまう自分の足も、心底恨んだ


『っや、たまたま辿り着いただけだしぃ!?!?!?てゆうか雨宿りだもん、沖田さんに会いに来たとか、そんなわけないし』


って、だれに言い訳をしてるんだろう…、私は…


門は開いていないのだから、当然中が見えるわけではないのだが、つい彼の自室がある方に向かって首を伸ばしてしまう。


『…沖田さん、なにしてるかな…』


少しは、私のこと…、気にしてくれてるのかな…


『って、だァかァらァア!!!ちがっ!?!?!?』


突然、雨が降りしきる音も払い除けて、真選組屯所の扉が重々しく、かつ急いでいるかのように開いた。

その音が、まるで私の他の音をすべて奪ってしまったかのように、なにも耳に入らない
っなんて回りくどい言い方をしてみたけれど、え?
なんでいるの?えっ!?!?!?
あ、いや、屯所だからいて当然なんだけど、ってそうじゃなくてぇ!?!?!?


『っうえ、ええええ、あ、ぅ、え、えっえっ!?!?!?えぇっ!?!?!?』


扉が開いた瞬間、物凄く切なそうな顔をした沖田さんと目があったと思えば、ただでさえ大きいその目をこぼれ落ちてしまいそうなほどに見開いて驚きの表情を表していた。
かと思えば間髪入れず、彼は私の手首をつかんでは"拒否することは許さない"といってるかのように嫌がる私の手を無理矢理引いて、屯所の中へ引きずり込んではそのままずんずんと、歩を進めていった。


『やっぁ、手っ、首、離してっ…!』

手首を握られるのが嫌いな私は、沖田さんがどんな表情で私の前を歩いているかなんて、気にする余裕もない。

とりあえず、一刻も早く、この手を離してほしかった


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