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□ハッピーエンドの幕開け
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あるところに、赤い赤い頭巾を被った少女がいました。
その少女には、森の奥の小屋に住んでいる病気のお婆さんがいました。



「赤ずきん、赤ずきん?このお花と食べ物をお婆さんにとどけてちょうだいな」


少女の母親である、ザッキーは少女にそう言いつけました。
彼女はえらく地味な母親でした。
こんな地味な奴からどうやったら、真っ赤なずきんをかぶるような娘ができるのでしょう
甚だ疑問です


「地味で悪かったなァァ!?!?ほっといてくれよっ!!!!!!!!!!!! 」


そして少女はそのお婆さんのためにお花と食べ物を沢山持っていくことにしました。




『…おばあさん…喜んでるくれるかな…』



道すがら、赤ずきんはそう呟きます。
赤ずきんはもう何年もお婆さんに会っていませんでした。
だからお婆さんがどんな人間だったのか、赤ずきんはあまり覚えていません

少し不安になりながらも、母親ジミーの(なんで名前変わってるんだよッ!!!)言い付けを守るために赤ずきんは道を急ぎました。




「ほォ…、えらく旨そうな奴がいるじゃねぇか。先回りして食ってやるか」


その時、そんな赤ずきんを舌舐めずりをして見つめている狼の姿に、赤ずきんは気づいていませんでした。



*


コンコン コンコン


お婆さんが住んでいる小屋の扉をノックすれば、少し軽そうな印象をもつ音が鳴り響いた。


「…おぉ、赤ずきんや、開いておるよ。早く入ってきてその顔を見せてちょうだいな」


扉の向こうから聞こえてきたお婆さんの声は、なんだか、男の人が無理して女のひとの声をだそうとしてるオカマのような声でした。
そういえば、母親ジミーに、お婆さんはゴリラの化身だと聞きました。
だからきっと、この声もゴリラの化身だからなんだろう、と自己完結をして、ゆっくり、静かにその扉を開けました。



「おお、赤ずきんや、早くこちらへきてその顔を見せておくれ」


声のした方を見れば、お布団が膨らんでいる、ベッドがありました。
なるほど、あの人がお婆さんなのか、と赤ずきんは納得します。



『…お花と、食べ物、持ってきた…』


篭を少し持ち上げてそう言えば、お婆さんは少し嬉しそうな声を出してありがとうと言った。
やはり、お婆さんのわりにはその声は低すぎる気がする…
それに、お婆さんも、顔を見せてと言うわりにはこちらを一度も見ない…

少し不審に思いながらも赤ずきんはゆっくりとお婆さんに近づきました。



『お婆さん…、久しぶりです…』

「ほんとに、久しぶりだねぇ」

『お婆さん…、お婆さんのお声はどうしてそんなに低いの…?』

「それは、少し風邪をこじらせてしまってねぇ…。声が鼻声になってしまったんだよ」

『お婆さん…、お婆さんはどうしてさっきから私の顔を見ないの…?』

「それはねぇ、お前に風邪を移さないようにするためだよ」

『じゃあ…』


赤ずきんはちらりとお婆さんの、わずかに見えている口を一瞥しました。
その口からは、立派な、とても立派な牙が生えていました。


『じゃあ…、どうしてお婆さんの口にはそんな大きな牙が生えてるの…?』


赤ずきんがそう言ったとき、まさに一瞬のことでした。

布団にうずくまっていたお婆さんは、ものすごい早さで起き上がり、赤ずきんに襲い掛かりました。

そして、その大きな歯をキラリとノゾカセナガラこう言ったのです。


「それはてめェを食うためだァァァァアアア!!!!!!!!!!!!」
































「……………おい」

『…?はい…』

「いや、はい…、じゃなくてだなァ?他になんかあんだろうがァァッ!?キャー!!!とか、食べないでぇぇぇ!!!!とかよォ!?!?!?」

『…そうですか?じゃあ…、きゃーーーー食べないでーーーー…、これでいいですか…?』

「お、おお……、って良くねェよッ!?!?!?」


なんと、お婆さんだと思っていた人物は、赤ずきんを食べようとする、悪い狼でした。


「てめェのお婆さんの、ゴリラは俺がさっき食っちまったとこだ。だからてめェも大人しく俺に食われなァ」


ニヒルな笑みを浮かべて、瞳孔が開き気味の目をギラギラを輝かせながら狼は赤ずきんにそう告げます。


『お婆さん…、食べちゃったんですか…?』

「はっ、怖ェか?」

『それは困ります…、吐き出してください…』

「アァッ!?!?!?んでそうなん…ぐえっ!?!?ちょっ、てめッ、腹に体重かけてくんじゃッ!?!?!?」


いつの間にか狼に馬乗りになった赤ずきん。
これではどちらが狼かわかりません。
(なんでだァァァァァ!?!?!?)


「ま、待てッ!?おまっ、これはおかし…ッ!?!?!?」



その時です
赤ずきんの下敷きにされている狼の頬ギリギリに銃の弾が走り去っていきました。

狼の頬からはうっすらと血がながれます。



「あーりゃーりゃー、いけないんだー。いたいけな少女を食っちまおうとする悪い狼は早急に始末しちまわねェといけやせんねィ?」


銃弾が飛んできた方を見ると、小屋の扉に背中を預けながらこちらに銃を向けている狩人がいました。

狩人は狼顔負けの真っ黒な笑顔で狼に銃口を向けます。


「これで土方を堂々と殺る名文ができたってもんでさァ」

「ちょっ、待て総悟!?!?!?これどう見ても、襲われてるの俺ッてかてめェは俺を殺りてェだけだろッ!?!?!?」

「good-bye 土方」

「おいコラ聞けやアアアアァァァァァ!?!?!?」


慌てて赤ずきんの下から抜け出した狼は、死に物狂いで狩人の銃弾から逃げます。

なんとか窓から逃げ出した狼
所々銃弾が掠ってしまったのか、少し血が滲んでいるようです。


「はァ…くそっ、総悟の野郎、ここぞとばかりに狙ってきやがって…、こうなりゃ別の手段で赤ずきんを…ッ!?!?!?」

「いかんぞトシ。女の子には優しくせねば!赤ずきんのお婆さんも、赤ずきんも、お妙さんも、女子には優しく接するべきだ」

「なんでてめェが出てくんだァァァァァ!?!?!?つか"お妙さん"は関係ねェだろ!?!?!?」

『……あれ?お婆さん…?』


思わぬ人物との接触により、逃げることを忘れてしまっていた狼は、背後から聞こえた赤ずきんの声にハッ!とします。

赤ずきんは狼を追いかけてきたのです。


「おぉ、赤ずきんちゃん。もう大丈夫、安心しなさい。お婆さんはすぐ帰ってくるよ」

『本当…?』

「あぁ、本当だとも。おじさんを信じなさい」

「お婆さんお前ええええええええ!?!?!?ってかあんた今おじさんじゃなくて一応性別女って設定だからァァァアアア!?!?!?」


ビュンッ


狼がお婆さんにツッコミを入れていたその時、またも、狼の足元に銃弾が飛んできました。


「っぶねッ!!!」


なんとか反射神経でそれを避けた狼は直ぐ様後ろを振り返ります。

案の定そこには銃を構えた狩人が立っていました。


「チッ」


小さく舌打ちをした狩人は心底残念そうな顔を浮かべます。


「おぉ!!!総悟!!!!!その狩人姿、なかなか似合ってるじゃないか!!!!!!!!!!!!」

「あり?なんで近藤さんがこんなとこに…まぁいいや。近藤さんこそ、そのゴリラの姿よく似合ってますぜィ?」

「本当か?似合ってるかどうか今一自信なかったんだが、総悟がそう言うなら間違いないな!!!」

「近藤さん…、あんたゴリラじゃなくてお婆さんだっつってんだろ…」


頭を抱えて溜め息を吐いた狼
その表情には心底疲れたという色が滲み出ています。


『…狼さん、お婆さんを返してくれてありがとう』


その声だけでなく、足音すらも静かな赤ずきんはゆっくりと狼に近付きながらそう言います。

狼は豆鉄砲でもくらったかのような顔で赤ずきんを見つめたあと、照れたようにその顔を背けます。


「勘違いすんじゃねェ!!!これは近藤さんが勝手に出てきちまっただけで俺ァてめェにお婆さんを返すつもりなんざ毛頭なかったんだ!!!」

『うん…、それでも、ありがとう』


狼の切り返しにまったく動じず、なおもお礼を言う赤ずきんに、狼はどうすればいいのかわからなくなりました。

混乱した狼は平静を取り戻すのに必死なようで、その黒い髪をガシガシと乱暴に掻きながら、なんとかこの平和な空気から抜け出せないかと思案します。


『だから、狼さん。私にお婆さんを返してくれたお礼をさせてください…』

「あ…?礼…?…ッ!?!?!?」



なにが起きたのか、一瞬狼には理解出来ませんでした。

頬に当たる柔らかい感触と、花のような優しい香り、そして鮮やかな赤い布


狼が、自分に起きている状況を理解したのはそれから数秒後のことでした。


「なっ!?!?!?////おまっ、何しっ!?!?!?//////」

『…?なにって、お礼…』

「いやっ、お礼って…ッ!!!「土方のムッツリ狼」ッ総悟コノヤロッ…!!!」

「ガハハハ!!!元気な奴等だなァ!!!!!!!!!!!!」


お婆さんの豪快な笑い声と、何処からか持ってきた狩人のバズーカによって凄まじい喧騒の中、未だに赤い顔が引かない狼はチラリと赤ずきんを見つめます。

同じように狼の方を見ていた、赤ずきんは僅かながらにも、そのコウカクヲ少しあげて狼に微笑みました。


「っ!?!?!?///////」


"おいおい…、そりゃ犯則だろ…"

狼にもう赤ずきんを食べようなんて思考はありません。



このようにして、赤ずきんと狼は仲良く暮らしていくことになったのでした。

ハッピーエンドの幕開け

(どっちか狼と赤ずきんだったのかはあなた次第)



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