√3xの心拍数


□√1×雨降って地固まって、芽が出た
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《結澄 side》



学級会が終わるとあたしの周りにクラスメートが群がってきた。

あちこちから飛んでくる質問に答える。

こうしているととても気分がいい。

みんなに必要とされている気がするし、今は何より…


『(アイツのこと考えなくて済むしね)』


って、結局考えてるじゃない!!

無心にならなきゃ、アイツのためには離れていくべきなのだから。

無心になろうと質問に答え続けていた時、視界の端に金髪が見えた。

ソイツはいつもより真剣みがあるような顔でこちらに近づいてきたかと思うとあたしが逃げないように手首をつかんできた。


「ねぇ黄瀬君!彼女出来たってホントなの?」


その言葉に反応してしまう自分にいらついた。

というかあたしが避けているのに近づいてくるコイツはなんなんだ。

せっかくこっちが気を遣っているというのに。

そのムカつきがあたしを突き動かしたのだろう。

ぐっ、と一度喉が止まって再び動き出し、自分でもびっくりするくらいすらりと言葉が流れ出た。


『ホントでしょ?だってあたし見たし』


いつもより少し高めの声が出て少しびっくりしたけれど言えた…と思った瞬間にあたしの腕が強くひかれた。



連れてこられたのは部室や特別教室の集まる棟。

目の前には灰崎から守ってくれたときのアイツがいた。

普段は見せないとげとげしさがあたしに向けられていて怖かった。

あたしの知らないソイツがそこにいて恐ろしさと好奇心が入り混じったような気持ちがあたしを押さえつける。

しかしここで負けてはいけない。

コイツの幸せのために。


「なんであんなこと言ったんスか」

『だって事実じゃない』

「はぁ?!何言ってんスか!あんなやつなんでも…『コラ。あんなやつとは何よ。彼女くらい大事にしなさいよね』

「アンタ…誰だよ」

『…は?幸せすぎてついに頭逝った?』

「だから誰だっつってんだよ!!いつもの誰にも分け隔てなくてちゃんと人を見てる結澄っちはどこ行ったんだよ!!」


思考がうまくついていかない。

…どうしてあたしは怒られているんだろう。

コイツのためにやったのにどうして怒鳴られて、本物のあたしはどこだとか聞かれないといけないのか。

何も分からない、あたしの中に渦巻き始めた感情もアイツの行動も。

ただ呆然とアイツの背中を見送ることしかできなかった。


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