√3xの心拍数


□√1×雨降って地固まって、芽が出た
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そして放課後、俺はダッシュで教室を抜け出すと結澄っちの教室へと向かう。

そこにはクラスの女子に囲まれた彼女がいた。

先ほどまで学級会でもやっていたのだろう。

学級会後に彼女が囲まれるのはいつものことだ。

その輪の中心に入っていくと女の子たちが俺を囲むようにして輪になった。

その中で逃げだそうとした結澄っちの手首とこっそりと掴む。


「ねぇ黄瀬君!彼女出来たってホントなの?」


一人の子がズバッと本題に突っ込んできた。

ここで言ってしまえばすべて解決できる。


『ホントでしょ?だってあたし見たし』


無理やり明るくした声が響いた。

その声は聞き間違いなんかではなくて確かに俺が手を握っている、その相手の声だった。

まっすぐ見据えればそこには俺の周りを取り巻く女の子たちと同じ笑顔の結澄っちが居た。

他の子たちはその一声に盛り上がっている。


「結澄っち、ちょっと来て」





掴んだままの手を引いてやってきたのは部室や特別教室の集まる棟。


「なんであんなこと言ったんスか」

『だって事実じゃない』

「はぁ?!何言ってんスか!あんなやつなんでも…『コラ。あんなやつとは何よ。彼女くらい大事にしなさいよね』


ガン、と頭を強く殴られたような衝撃が俺を襲う。


俺の目の前にいるこの子は一体誰なんスか…?


俺が好きなのは周りに流されない結澄咲良なのに。


「アンタ…誰だよ」

『…は?幸せすぎてついに頭逝った?』

「だから誰だっつってんだよ!!いつもの誰にも分け隔てなくてちゃんと人を見てる結澄っちはどこ行ったんだよ!!」


もう何も考えられない。

ただただ感情が高ぶっているのだけはわかる。


「もういい」


何がいいのかは俺にだってわからないけれどなんかふっ切れたのだけはわかった。



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