√3xの心拍数


□√1×雨降って地固まって、芽が出た
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次の日からあたしは徹底的に黄瀬を避け続けた。


「結澄っち!」

『……』


今朝から何度も何度もリピートされたこの光景。

てかコイツはここまでして何をあたしに伝えようとしてるのか。

彼女がいるんだから女友達の一人くらい放っておけばいいじゃないか。

そう思いながらあたしはまた黄瀬を無視した。


「結澄っちに大事な話があるんスよ!!」


大事な話とか彼女にしとけ、と言いかけて、冷たくすることを思い出した。

唇を噛んで、あたしはその場を後にした。





結澄っちに何度目かわからないほど逃げられた。

話しかけても無視。

挙句に速足で逃げるから俺の中に広がるのは不安だけだった。

みんなが彼女だ彼女だ、と囃し立てているのはなんでもないただの顔見知り程度の女子だ。

もう学年全体には広がっているし、結澄っちの行動からみても誤解されているのは明白である。


「もう無理っス…」

『諦めるには早すぎますよ、黄瀬君!!』

「だって…今朝からずっと拒否されてるんスよ。もうダメだ、絶対誤解してるっス…」


上体を机にぐったりと倒して弱音を吐く。

相談相手は最も確実な雪村っち。


『咲良は頑固ですからね…』

「一回思い込んだら話聞いてくれないんスよね…」

『でもだからこそ本当のこと話したらびっくりして聞き入ってくれるんじゃないですか?』


顔を上げるとにっこり笑う雪村っちがいた。

その笑顔をみると無条件で元気になれる。

俺の知っている人の中で見た目は一番幼いけれど中身は一番大人びた人。


「そうっスね。まだ無視られて一日目だし、慣れっこだし。もうちょっと頑張るっス!!」

『その意気ですよ!!』


時計を見上げると昼休み終了直前を指していた。

作戦決行は部活前になりそうだ。

それまでは一生懸命、作戦内容を練ることにしよう。



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