Slll・novel

□言い訳はこれにしようか、
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「なぁ、アラジン。今日、あいつは?」

「あ、スフィントスくん。うん、実は…」









『へくしゅんっ!!!!!!!!!…あー…だる』


本来二人部屋であるこの部屋のなかで、あたしのくしゃみだけがやけに反響した
まぁ、それは当然で、いつもならばあたしもここにいるはずもなく、とゆうか、この時間ならここら一帯はすべて静けさに包まれているのが本当であろう。

つまり、要するに、風邪を引いて寝込んでいるのである



『ってあたしはなに一人で解説してんの、誰に解説してんの』


…………………。



『あー!!!!もうっ!だからなに一人でいってんのよ!!!!!!!!!…やめよ。やめだやめ。なんか虚しくなってきた』



アーラージーン…

いつも仲良くしているクラスメートの名前を何度も心の中で反芻しながら、静けさによる孤独感と風邪による倦怠感に耐える。


うーん…、風邪になると妙に寂しくなっちゃうんだよね…


『……ねよ』


肌寒く感じる部屋のなかの冷気を遮るように頭まで布団を被れば、じんわりと温かみが染み込んできて、それと比例して眠気も襲ってくるようだった。


『……。』


あっさりと眠りに落ちたあたしは、なぜか寂しさの残る心境の中で、アラジンではなく、アラジンのルームメイトである奴を思い描いていた。

























『んっ…ふぅぁ…、あーよく寝たわ…』


あれから数時間ほどして眠りから目覚めたあたしは、思いっきりのびをしては、寝たあと特有のあの体のダルさを取り除こうと試みる。


が、



『あ、れ…?』


なぜか視界はぐにゃりと歪み初めて、じわじわと目のはしから暗くなっていく。

あ、やばい…


突然の目眩によって、ベッドから豪快に落ちそうになったあたしは言うことの聞かない体をコントロールすることもできず、そのまま重力にしたがって傾いていく。


痛みに備えて、目をぎゅっと強く閉じようとしたとき、目のはしで、かすかにとらえたのは、あたしたちが普段着ている、マグノシュタットの制服だった。


そっと、抱き締めるように、とは言い難く、少し乱暴に抱き止められたあたしの体は、地面に衝突することもなく、柔らかいベッドの上へと再び引き戻された。



「なにしてんだよ…」

『あ』


呆れたようにそう言った彼の声が誰のモノか理解したのと同時に、あたしを助けてくれたヒトの顔を見上げる。


『…なんだ、あんたか』

「あ?悪かったな。アラジンじゃなくてよ」

『本当に悪いわね。ちょっとそこで土下座してくれる?』

「なんでだよっ!!!!!!理不尽すぎんだろ!!!!!」

『うるさい。病人の耳元でぎゃーぎゃーわめかないで』


頬をぴくぴくとひきつらせながら青筋を立てている。
カルシウムが足りてないみたい


「ったく。んだけ元気なら大丈夫そうだな。心配して損したぜ…」


あたしが失礼なことを考えている最中、すぐ横で聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。


ん?あれ


『心配したの?』

途端、奴を自分が言った言葉に気付いたのか、急激に顔を紅潮させて、勢いよくあたしに背を向けた。

奴の首もとに巻かれている、というか巻き付いている蛇だけは今だこちらを見つめていたが。


『…ねー』

「…んだよ」

『すきー』

「は、…はっ!?」


今度は勢いよくこちらを振り向く。
蛇も奴もこちらを見つめた。


『アラジンの次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次にね』

「それって結構普通じゃねぇっ!?」

『てゆうかさー、しんどい』


からかい半分で奴をおちょくっていたあたしだが、やはり目眩やダルさをは消えることはない。

てかこれ、風邪絶対悪化してるわ


『んー…』


くらくらとする熱の籠った頭がふらりふらりと揺れる。


「っ、人で遊んでる場合かよ!」


すると、奴は慌てたようにあたしに近付いてきて、あたしの頬をガシッとつかんでは、それとは対照的にやさしくあたしのおでこに奴のおでこをくっつけた。


『っ!?』


吐息がかかりそうなくらいに近くて、あたしの視界は奴の褐色の肌に埋め尽くされる。


途端赤くなってしまった頬の意味はわからない。


『…な、なにしてんの…?』

「熱計ってんだよ、こっちの方がはえーし」

『…そ、うね』

「つーかなんか顔赤くね?やっぱ熱高ぇみたいだな…」

『た、多分…』


赤いのは熱だけじゃなくてあんたのせいだと思うけどねっ!!!!


心の中で叫んだ言葉は口に出すことはなかった。


「じゃ、ちょっと俺部屋から解熱剤もってくるわ。どうせ俺はそんなの使わねーし」

『あー、そういや、あんた医学系の魔法得意だったもんねー…』


口ではそう言いながら、なにか心の中で泣きたくなるような感情が渦巻いた。


「んな寂しそうな顔すんなって。すぐ戻ってくるっつーの」

『っはぁ!?なんであたしが寂しがんなきゃいけないのよ!調子のんなっ!!!』



ってか、気付いたけど!


『ってかあんたがあたしの風邪を魔法で治してくれればいいんじゃない!』


名案!ってか、なぜ今まで思い付かなかったのか
やっぱり風邪で頭がぼおっとしているようだ


「それはダメだ」

『はあっ!?』


即答で切り捨てられたあたしの提案。
てかなんでダメなの
あれか。あたしごときの為に魔力を消費したくねぇってか。
くそ。その蛇で首しめてやろーかこのやろー


「他の奴に治してもらうのもダメだかんな」

『がちでしんどいんだって…。治してくれたっていいじゃん…あとでなんか奢ってあげるからさー…』

「そーゆう問題じゃないんだよ」

『いじめですか。そうですか。最低だな』

「あーもうっ!良いから黙って寝てろ!!!今日から毎日看病しにこの部屋通ってやっから」

『…え?』

「〜っ!!!とりあえず寝てろ!!!薬取って来てやるから!!!!!!」


ばたんっと乱暴に出ていった奴の耳と頬は褐色の肌でもわかるほどに赤く染まっていた。

それをついうっかり、偶然、必然、たまたま、どれが正しいのかわからないが、目撃してしまったあたしの頬は、奴のように褐色ではないからくっきりと赤くなっていることだろう


風邪のせいってことにしとくからいいけど…。


毎日通うってどういうことだろ?
毎日通う、毎日会える

がらにもなくほわっとした暖かい気持ちを胸に抱きながら、大人しく彼の帰還をまとうも思った。

そして、またからかっていじめてやるのだ



会えば口喧嘩の多いあたしたち。
あたしはこの関係に満足してるけど、なんとなく、今日は少しだけ、ほんの少しだけ甘えてみたくなったのは、まぁ、あれかな



風邪のせいってことにしときましょーか





言い訳はこれにしようか、




(あれ、スフィントス君じゃないか。なんでそんなにお顔が真っ赤なんだい?)

(あ、あああ、赤くねぇよっ!!!)

(?そうかい?)

(あたりめーだろ!!)

(…あ、ところでスフィントス君。よく頑張ったね)

(っ!?!?!?////)


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