√3xの心拍数


□√3→1×祭りの後の騒がしさ
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三人で緑色の頭を探す暇もなく、その人はすぐにあたし達の前に立ちふさがった。


『みどちゃん!』

「結澄、遅かったな」


時間に厳しいみどちゃんからオカンオーラが出ている。


『ごめんって!…ひとつお願いがあるんだけどさ…この子も一緒に出ていい?』


大きいみどちゃんが怖いのか悠太くんはおびえ気味でみどちゃんはみどちゃんで子供が苦手なのか引き気味だ。


「どっ、どうしてこんなガキと出るのだよ!!」

『この子迷子で…朝から親が見つかってないの。だからお願い』

「ホントに頼むっスよ!!」


その言葉にみどちゃんが顔を引きつらせる。


「早くこの子を母親のところに帰してあげないとかわいそうっスよ」

『本当にお願い!!この恩は絶対返すから!!』

「…わかったのだよ。出ればいいのだろう」


半ばヤケクソでみどちゃんが言った。


『よっしゃ!ありがとね、みどちゃん!!』

「れっ、礼などいいのだよ!!さっさと行くぞ!!」


もうそろそろあたし達の順番が回ってくるころだった。


『じゃあみどちゃん、悠太くんと手つないで』

「なっ……手を、出すのだよ悠太」


ぶっきらぼうだけれど差し出された手を悠太くんは恐る恐る握って、はにかんだ。


「次は、緑間真太郎君と結澄咲良さんチーム!!」


ステージの中央まで出ていくと会場のざわめきが伝わってきた。

あたしは目配せを使って薫にマイクを貰った。


『えっと…結澄咲良です。今朝からこの男の子を預かっています。名前は…「悠太!!」


そこまで言ったところで女の人の声がして、悠太くんの手が抜けていった。

母親らしきその人はひとしきり再会を喜んでからあたし達にお礼の言葉を述べてくれた。


『本当に見つかってよかったです』

「ありがとうございます。本当になんとお礼を申し上げていいのやら…」

『いいんですよ。あたしも楽しかったですし』

「お姉ちゃん、ありがとう!!あと、黄色のお兄ちゃんにもありがとうって言っといて!」

『うん、わかった。黄色のお兄ちゃんに伝えとく』


笑顔で返すと、最後にとびっきりの笑顔を残して悠太くんはお母さんと体育館を後にした。


『良心的な美男美女でしたっ!!もう一度緑間真太郎君と結澄咲良さんに大きな拍手を!!』


大きな拍手を背に舞台袖へ戻りながら言う。


「結澄っち!!作戦成功っスね!!」

『うん、ホントよかったぁ〜。…それとみどちゃんもありがとね』

「礼はいいと言っているだろう。…それにあのガキも俺たちの勝利に少なからず影響したのだよ。やはり人事を尽くすものだけが天命を得られる…」


と、みどちゃんが全力のドヤ顔を決めた瞬間に割れんばかりの歓声が体育館を隅々まで埋めた。

振り向くとそこには赤司と珠央の姿があった。


『…ま、赤司様には天命もかなわないけどね』

「う、うるさいのだよ!!」


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