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□答えは案外すぐ傍に
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いつからだろうか
俺があいつを意識するようになったのは

それはもう随分と前のような感覚で、いつからなんてあやふやで特定できるもんじゃない
ドラマやアニメ、小説みてェに一目惚れというわけでもねェ


なんとなく、まるでそれが当たり前のように俺はあいつに惹かれて、気付いたら溺れてたんだ。





答えは案外すぐ傍に





「自分の恋愛について作文書けとか、マジ趣味悪ィよな。うちの担任・・・」


恥ずかしくねェのかね?
そう言いながら、同意を求めるように俺は目の前の奴に問い掛けた。

するとそいつは俺をちらりと一瞬見たあと、再び手元の作業に視線を戻した。


『恥ずかしいって言いながらノリノリで書いてるあんたの方がよっぽどだと思うけど。なにが、溺れてたんだ、よ。恥ずかしくないの?』


俺を見ることなく、そう淡々と告げるこいつに可愛げもなんてモンありゃしねェ


そりゃ恥ずかしいに決まってんだろーが
誰が好き好んでこんなこっ恥ずかしい文書くかってんだ。
しかも絶賛片思い中だってのに
なんか、一文字書く毎に虚しさが込み上げてきて仕方ねェんだけど


『へー。そう、頑張って』

「頑張ってって・・・、手伝う気0かよ。アドバイスくれェしてくれてもいいんじゃねェの?作文だけじゃなくて、リアルに俺の恋の成就にも繋がるかもしんねェんだぞ」


なーんてな。そんなのただのこいつの好みを聞き出す為の口実なんだけど


『そんなの知らないわよ。自力でなんとかして』

「・・・なんか今日機嫌悪くね?」

『そりゃ、人が熱心に絵を描いてる時に横でペチャクチャと邪魔されればね』


妙に鋭い言葉が突き刺さった。
っとに、可愛げねェな・・・
ん?いや・・・、もしやこれは、やきもちを妬いてるんじゃ・・・
・・・・・・ねェな。こいつに限ってそれはない


自分で考えてまた傷ついた。
実は俺ってバカ?
あ、また傷ついた。いい加減自分で自分を傷つけるのやめよ


頭をガシガシと掻きながら、なにか話題はないかと頭を巡らせる。
勿論こいつがちゃんと返事してくれそうな内容の


「あー・・・、あっ!そういやお前さっきから何描いてんの?」


この話題があった。
美術部のこいつのことだから、この話題には絶対食い付く!

内心ガッツポーズの俺は期待の眼差しでこいつの返答を待った。


『なんだっていいでしょ』


しかし、今のこいつは俺が思っている以上に機嫌が悪いらしく、そうバッサリ切り捨てられた。

いや、まぁ、たしかに返事はしてくれたけどね?


ツーンとした表情のままひたすら絵を描き続けるこいつに少し不満を感じて、強行手段にでた。


『あっ!ちょっと・・・っ!!』


絵を描いていたこいつを強引に退かせて、俺は絵を覗きこんだ。


え?まじでか


『・・・・・・』

「え、おま、これ・・・」


少しの沈黙が続いた。
まさかの衝撃
だって、ほら、まさかよォ・・・


「なんで土方ッ!?」


普通ここは、俺で、さっきこいつが頑なに見せなかったのは俺にそれを見られるのが恥ずかしかったからとか言う、なんか甘酸っぱい転回じゃねェのッ!?途中までそんな感じだったじゃん!?なんなのこのフライング!?しかもなんで土方!?


「・・・なんで多串くん?」


思った以上に冷たい声が出ちまった。
案の定こいつは肩をビクリと揺らし、さっきまで目もくれなかった俺の様子を伺っている。


『・・・なんか、怒ってる?』

「怒ってねェよ」

『・・・・・・もうすぐ土方の誕生日だから・・・』


あー、はいはい。
誕生日にこれをプレゼントしたいわけね
恋する乙女の思想にお腹一杯だよ、俺ァ


失恋確定レッテルを貼られた俺の機嫌はますます悪くなる。



「帰るわ俺」

『え・・・?』


なんでいきなり?と視線で問いかけてくるこいつを無視して、俺はその場から立ち上がった。


『え、ちょ、坂・・・』

「じゃあな」


立ち上がった俺は振り向きもせず扉に向かって歩いていく。
勿論焦ったようなこいつの声は無視して


あーあ、なんか馬鹿みてェ
つか、どうしよ作文
間接的にだけど、俺フラれちまったんだけど。こんな状態で恋愛について書けとか傷口に塩塗んのと変わんねェんだけど


俺も彼女、適当に作っかな〜・・・


そう思いながら扉に手を掛けようとしたとき、後ろから引っ張られるような力を感じた。


「んだよ」

『・・・あんたなんか勘違いしてない?』

「は?」


勘違いだァ?
なんのことか、見当もつかず、俺はこいつの言葉に耳を傾けた。











『これ、依頼品なんだけど』




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