桜/魂


□ただ呆然と片鱗は
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「咲良、銀時、お風呂上がりましたよ」


食事のあと、すぐにお風呂に入ると言って浴室に行っていた松陽先生が浴室から帰ってきた。

首にタオルも巻かず、まだ水滴が滴る髪が松陽先生の寝間着を濡らしていた。


『わっ!?ちょ、先生!髪全然拭けてない!!!!』


先生が通った畳に、ぽたぽたと落とされた水滴がその道を表すようにじんわりと染みを作っていた。


「あはは。ほっとけばすぐに乾きますよ」

『そういう問題じゃないでしょ!髪ながいんだからちゃんと乾かさなきゃ!』


叱りつけるあたしに松陽先生はすみませんと謝りながら微笑んだ。


「お前だってたまに髪濡らしたまんま出てくんじゃねェか」


あたし達のやりとりを見かねてか、ただ単に思ったことを言っただけか(おそらく後者)わからないが、銀時がそう口を挟んできた。


『あたしはいいのよ。松陽先生はダメ』

「どんな理屈だよ!!!ったく、二人とも天然パーマの苦しみなんざ知りもしねェで…」


なにやらいじけ出した銀時は無視して再び松陽先生に向き直る。

依然として微笑みを浮かべている松陽先生は、何が楽しいのか少し声まで上げて笑っていた。


『…もう、ちょっと待ってて。タオル持ってくるから』


まるで動く気のない松陽先生に呆れた声でそう言えば、横でまた銀時が“さっさと行けよ凶暴女”と呟いたので一蹴り入れて居間から出ようとした。


「あ…、咲良」


出る寸前、あたしを呼ぶ松陽先生の声が聞こえた。
あたしはその声にゆっくりと振り向いた。


『なに?』

「ついでに髪拭いてくださいね」


どっちが年上かわかったもんじゃないお願いをするもんだから、あたしはぷっと吹き出す。
そして“はいはい”と言う意味を兼ねて軽く手をひらひらと揺らしてみせ、居間を出た。









「……ねぇ銀時」

「何?先生」

「羨ましいでしょう」

「…はぁッ!?!?!?!?」

「ふふっ」


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