√3xの心拍数
□√3×歌で幕あける最高の舞台
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ジャン…、と最後の音が消え、ぞろぞろと舞台から降りていく。
元の定位置に戻る途中、黄瀬が小声で知紗に話しかける。
「うぉーっ!!燃えたっスね、雪村っち!!」
『はい!黄瀬君上手でしたよ。流石モデルさん!!』
そうっスか?と黄瀬があからさまに喜んでいるとズボンが軽く引っ張られたような気がして下を向く。
『お疲れ』
「結澄っち!!俺頑張ったっスよ!!」
『あ、そう。でさ、知紗…「見て欲しいっス〜!!」
抱きつく黄瀬を剥がせないでいると知紗が笑いつつも真剣な顔で咲良に言った。
『負けませんよ?』
『あたしだって、負ける気しないわよ』
笑みを浮かべつつ見合っていると緑間が近づいてくる。
そろそろなのだよ、と眼鏡のブリッジを押し上げながら言ってきた。
『んじゃ、頑張ってくるわ。あと…上手かったわよ』
咲良は返事すら待たず、黄瀬たちに背を向けてクラスの輪に帰って行った。
「え…それ…俺のことをっスか?!マジで!!結澄っち俺超しあわs『黙れ駄犬が』
咲良は背中越しに黄瀬の遠吠えを封殺するとクラスの円陣に向き直る。
ぐるっと見渡すとまだ二カ月程度しか経っていないが見慣れた顔が続く。
世界がふいに広がったような気がして少しめまいが咲良を襲う。
『さっき、あんな喧嘩売られて頑張らないわけにはいかないわ。…優勝奪い取るわよ!行くぞっ!!』
「「「オォーーーッ!!!!」」」
舞台に上がって見るとまた違った感覚が咲良を襲う。
孤独だけれどクラスメートたちの顔が現実に引き戻してくれる。
ピアノの前に座り、こちらを見ている緑間に視線を移すと見慣れたその緑についホッとして微笑んでしまう。
「!!…っ///」
一瞬緑間が赤くなった気がしないでもないが気にせず、腕を振り上げる。
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