桜/魂
□マゼンタの視界に
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「………」
案の定、晋助は一つも水風船を取れなかった。
効果音に“ぶっす〜…”なんて聞こえてきそうなくらいに、すっかり不機嫌になってしまった晋助を後ろから見遣る。
これは、まずいな…
『晋助さーん…?』
「あ゙?んだよ…」
声低っ!!
流石にちょっとやりすぎたな…
重苦しい空気のままトボトボと次の屋台を目指す。
『もう…機嫌直してよ』
小さく呟いた言葉ですら聞こえたようでジロリと睨まれた。
『はぁ…』
つい溜息が零れた。
「文句あんだったらどっか一人で行きゃァ良いだろうが」
『文句あるなんて誰も言ってないでしょっ!』
どんどん機嫌が悪くなっていく晋助。
そんな晋助に釣られてこちらまでイライラしてくるものだから、ほんとどうしよう
それでも祭でこんな空気は我慢できなくて、謝ろうと振り向いた時
『あ、れ?晋助…?』
晋助の姿はどこにも見えなかった。
名前を呼んでも、人混みのざわめきだけが耳に入るだけで、晋助の声は聞こえない。
『………、』
どうしよう…。
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