桜/魂


□欲深さは海のよう
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振り返らずとも、その声で誰なのかわかった


「あ?何の用だよ高杉…?」


振り返るとさっきの俺のように眉間に皺を寄せた高杉がいた。


「ちょっと面貸せよ」

「……」







**



連れていかれたのは寺子屋の裏だ



「…で、何だよ?こんなとこに呼び出しやがって…。告白でもすんのか?悪ィけど俺ァ男に興味はねェぞ」

「ざっけんな!!違ェよ!!」

「じゃあ何だよ」

「咲良のことだ」



やっぱりね
つーかそれ以外にねェだろ

なんか無性に舌打ちしてェ気分になった。



「なァおい。銀時ィ」

「あ゙?」

「てめェはどう思ってンのかは知らねェが、俺ァ咲良のこと好きだ」

「……」



唐突に告げられた高杉の気持ちに冷や汗が流れた


知ってるさ
だってお前らをくっつけようとして結局自分があいつに惚れちまうような奴だぜ?
気付いてねェわけねェだろ


「最近あいつを避けてんのはあいつが好きだからか?」

「……」

「気持ちはわかるからな、それについては何も言うつもりはねェよ。ただな…」



高杉が真っすぐ俺を睨む


「俺だっててめェと同じ気持ちだ。だからてめェに気ィ遣うつもりはサラサラねェよ。ハッキリ言うぜ?」


“あいつの全部を俺が奪ってやらァ”



「っ…」


声が出なかった。

高杉はやはりそんな俺を睨みつけたまま


「…話はそれだけだ。じゃあな銀時。俺ァ先に寺子屋に行っとくぜ」



異常なほどに血の気が引いた頭で俺はただボンヤリと高杉の声を聞いていた。



「……やっぱり告白じゃねェか」










深さは海のよう



(俺に向けられた宣戦布告に沸き上がったのは)
(醜い嫉妬と小さな恐怖心だった)



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