S・novel
□アントシアン上昇中
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赤司が図書室に来なくなったあの日から赤司は姿を見せなくなった。
と同時にウチの中に何かが溜まっていく感覚が前より大きくなってきた。
ちら、と扉の方を見る。
誰の来る気配もない。
『…赤司、征十郎』
「呼んだかい?」
顔を上げると目の前に赤司がいた。
赤と黄色のオッドアイが細められる。
「この間は緑間だったのに?」
『!!…あれは「寂しかったんだろう?」
赤司がぐっと距離を詰めてきた。
「俺が来なくなってからどことなく寂しそうになった。図書室でも誰か来るたび顔を確認するようになった。…今、表情には出してないのにって思っただろう」
矢継ぎ早の言葉が終わったと同時にウチの唇に柔らかいものが触れて更に生暖かいものが侵入してきた。
『!?…んっ、はぁっ…』
見上げると赤司が嬉しそうに笑っていた。
「君のことを全部理解できるのは俺だけだ。だから、これからは俺だけを見ていろ」
瞬間、今まで溜まっていたものが吹き出してウチを真っ赤に染めた、そんな気がした。
紅葉に向けて桜の葉が色付き始める秋口のことだった。
アントシアン上昇中
(真っ赤な色素で染められていく)
2012.09