桜/魂


□取り繕っても足りやしない
1ページ/3ページ








銀時達との感動の再会を交わしてからはや数日。




あたしと銀時の関係は…












最悪だった。






もう何から話せばいいのか、そもそも話さえできずじまいで
銀時はただひたすらあたしを睨むか避けるかのどちらかで
あたしはあたしでそんな銀時にどうすることもできず


あぁもう腹が立つ。



『あたしだって…』





わかってんのよ、ほんとは…
でも、あたしは、







『で、なんであんたがここにいるわけ?』




"晋助"



いつも間にやらどっかりと、あたしの横に座り込んでいる晋助に突き刺すような視線をプレゼントする。

あぁこの顔はわざとだな
わざと嫌がらせしにやってきやがったなこのドチビ大魔王が




「俺がどこにいようと俺の勝手だろ?
お前にとやかく言われる覚えはねェな」


うぜェ。
どや顔がうぜェ。


『はいはい、そうですね
で、なんか用があるんでしょ?
さっさと教えなさいよ』

「まぁそう急かすんじゃねェよ
懐かしの幼馴染み様とゆっくり会話をしたいっていう俺の粋な計らいを無下にすんじゃねェ」

『…粋な計らいって、あんたそんなキャラだっけ…?』



あたしがここにきてからもう数日の月日が経っている。
今更感が満載でなんか怪しい。
てゆーかもう顔が怪しい。


厄介事は御免だ。
まさにそんなあたしの気持ちが顔に出ていたのか晋助は愉快そうに(あたしからみて)嫌味な笑いを浮かべた。



「で、どうだィ?
あれから銀時の説得はうまくいってんのかよ?」

『いってるわけないでしょ
あのバカがどんだけ頑固者なのかあんたもよく知ってるでしょ?』

「ハッ、違ェねェ」




銀時のここ数日のあたしへの態度を思い返すだけで溜め息が込み上げてくる。
でも、今回はあたしが悪いし、あいつはいつだって…
あーだめ。違う違う。だからといってあの態度はないわ。ムカつく。腹立つ。キンタマぶつけて死ね。


ふつふつと沸き上がってくる怒りの感情に、晋助が横にいることも忘れて近くの木をゲシゲシと蹴りつける。


"おいおい…"と、晋助に呆れたような声でハッと我に返った時には木は見るも無惨な姿になっていた。



「…んなに腹立つんなら銀時なんてほっときゃいいじゃねェかよ?」

『……』



晋助のごもっともな台詞に一瞬言葉が詰まった。
銀時にも言ったように、此処にきたのはあたしの勝手なんだから、たとえそれを銀時が拒んだとしてもあたしには関係ないことだ。
銀時があくまでもあたしが此処にいるのを反対したとしてもほっときゃ良い話だ。…たしかにその通りだ。

でも、



『……それは、…いやだ』

「あ?なんでだよ」

『……』



何でと聞かれたら少し困る。でもいつだったか…


『ねぇ晋助。昔あたしと銀時が大喧嘩したときのこと、覚えてる?』

「大喧嘩…?」

『まぁ…、喧嘩ってゆーか…、銀時が一方的にあたしのこと避けまくってただけなんだけど…』

「あー、あれな」

『あの時はめちゃくちゃに腹立ってそれどころじゃなかったけど…
でもそれ以来、いっこだけ、確かに気付いたことがあるの
今回もそれと多分一緒』

「…………」

『…あたし、銀時にはいつだってあたしのこと、認めててもらいたいの
…だから、…それは、だめ』

「……、…………そうかィ」




困らせたくてこんなところまで追い掛けてきたわけじゃない。
ちゃんとあたしの気持ちを知ってもらって認めてもらわなきゃ、
あたしは、ここにはいれない。



『だから意地でも認めてもらわなきゃダメなの』

「……………ハッ、あのバカも愛されてるじゃねェか」

『なっ!愛とかっ、何言ってんの!?!?!?別に銀時に限った話じゃ…!!!あたしは晋助やヅラにだって…!!!ちょっと聞いてんのっ!?!?!?』



興が醒めたとでも言うように、晋助はもうこちらを一瞥もせず。

散々自分からあれこれと聞いてきたくせに興味が失せた途端これとは…
相変わらず我が儘な奴め…。


あたしはそんな晋助の背中を睨み付ける。

すると、晋助は"あー…そういやよォ"と、にわかに何かを思い出したかのようにこちらを振り返った。



「さっきヅラが呼んでたぜ

…あともう一人のもじゃもじゃの方も」




うん、辰馬だな。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ