桜/魂
□取り繕っても足りやしない
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そう言った咲良の表情はたまらなく苦しげで
俺を真っ直ぐ睨み付けるその目は恐怖とか悔しさとか、悲しみだとか
色んなもんが混ざりあってるようで
その姿は、かつて俺の胸ぐらを掴みあげて泣きながら"ふざけんな"と訴えてきた少女の面影が重なった。
けれど、あの時と違うのは、泣いてはいなかったってことだ。
今にも泣き出しそうな目してるくせに……
まるで、あの頃から成長していないのは俺だけな気がした。
胸のなかがドロドロと重くて、頭ん中がうまくまとまらない。
真っ黒な感情と、切ないくれェの何かが込みあがってきて
ただ、その感情を認めちまったら、取り返しのないつかないことになりそうで
その"取り返しのつかないこと"がたまらなく怖ェ
きっとほんとはこいつの方がずっとずっと強ェんだ
「………お前ェはなんもわかっちゃいねェよ」
『っ!』
気丈に俺を見上げていたその目が溢れそうに潤んだような気がした。
俺の返事に、怯えてんだろーな…
まぁ、そりゃそうだよな…
あーぁ、泣かせてばっかじゃねェか
「お前が、お前の知らねェところで俺らが死ぬことにビビっちまってるように
、俺らだって…、てめェが死ぬところなんざ見たくねーんだよ…咲良」
"だから、やっぱりお前ェは帰れ"
それでもやっぱり譲れねェ。
いっそのこと昔みてェに大泣きして、俺のこと責め立ててくれりゃァ…
……いいや、考えるのはやめだ。
やっぱりどうしたって譲れねェんだ。
取り繕っても足りやしない
(これはキレイな感情なんかじゃねェ)
(お前のそれほどキレイなもんじゃねェから、俺は、認められない)
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