桜/魂


□取り繕っても足りやしない
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「俺は反対だぜ」



開口一番。
俺は間髪いれずそう言い放った。
勿論、次の戦に咲良が参加することについてだ。
次の戦だけじゃねェ。今後の戦すべてにおいてだ。



「ここはあいつのいるような場所じゃねェ
俺は絶対ェ認めねェからな」



俺の固くなな態度に、周りの奴らはどよめき、ヅラは困ったような表情で頭を抱えている。

そして気に入らねェことに、咲良をここに連れてきやがった坂本という奴ァ、なにを考えてるのかサッパリわかりゃしねェ



「しかしだな…、銀時…
咲良とて、なにも半端な気持ちでここまで俺達を追ってきたわけではないだろう
お前の気持ちもわからんではないが、咲良の気持ちも…」

「んなこと知ったこっちゃねェんだよ!!!!!!」

「銀時!!!!!」

「んだよ!つーか何てめェまであいつが此処にいること認めてんだよ!てめェだってあいつを此処に連れてくることに反対してたじゃねェか!!!!あいつに丸め込まれてんじゃねェよ!!!!」

「今と昔では状況が違うだろう!!!
それに、丸め込まれたわけではない!!!!!
ただ、咲良の言い分も聞いてやれと言っているだけだ!!!」

「だから知ったこっちゃねェって言ってんだろーがッ!!!!!」


苦虫を噛み締めたような顔をして俺を睨み付けるヅラ
気に入らねェ


すると、睨み合う俺達を交互に見つめ、さっきまで一言も話さず聞いていた坂本はおもむろに口を開いた。



「つまり、おまんはどげな理由があってもおなごが戦に参加することに反対ぜよ?それとも咲良が戦に参加することに反対しちゅうか?」

「な…んだよ突然…」



鋭く射抜くような視線に思わずたじろぐ。
こいつ…、こんな顔してたか…?



「いやいや、前に似たようなことがあったんじゃき。
女ちゅう理由だけでこじゃんと周りから浮いちょった女がいたき」

「……なにが言いてェ?」

「そげな奴らは、その女の戦いを見て考え方を改めたぜよ」

「…」


「わしが証明するき。咲良は強いじゃ。
ここまでその背中を守ってきたわしが言うのほんやき間違いおらんき」




そう言い放ったこの男の目に微塵の疑いもなかった。
その目がなおのこと、ここまでどれだけあいつと共に支え合ってきたか示しているようだった。

なにも知らねェくせに……。

知ったような口利きやがって
俺がどれだけ……ッ


奥歯がギシリと軋んだ音がした。


心の底から腸が煮えくり返りそうだった。
こいつの顔も、目も、その発言も
何もかもが癪に触った。


気付けば俺はそいつの胸ぐらを掴みあげていた。
俺を止めようとするヅラの声が聞こえたがまるで耳に入らない。


なのに、俺に胸ぐらを掴みあげられている当の本人はまるで俺なんか気にも止めていないかのように余裕の笑みを浮かべている。


そして頭に血を上らせる俺を見据えながら、その男はもう一度ゆっくり言い放った。


「咲良の戦いを見てみるき。
あいつを拒むのはその後でも遅くなか」



あまりにもその声が真っ直ぐ俺の胸に突き刺さった。

と、そこで周りの奴らが焦ったような表情をしていることに気付いた。


その視線の先は俺の後ろ。



俺はその視線に従い、ゆっくりと後ろを振り向いた。




『あー…、えっと、ヅラと辰馬があたしを呼んでるって晋助の聞いてきたんだけど…』


"お邪魔だった…?"
明らかにその顔をひきつらせた咲良が俺の後ろに立っていた。

俺の心臓がドクリ…と嫌な音をたてた。



だがそれも一瞬のことで、咲良はそのひきつった表情をスッと引き締め、俺のほうに一歩踏み出した。


「っ…」

『銀時』



"逃げないで"
と、その視線に言われた気がした。




『銀時、ごめんね』

「!?!?!?」



まさかここで謝られるだなんて思ってもみなかった。


その言葉に俺の体と思考は思わずフリーズする。


『あたし、ほんとはあんた達が松陽先生を連れて帰ってくるまで待とうと思ってたの…

でも、無理だった
怖かったの。
一人の夜が怖くて、もしあんたらがあたしの知らないところで死んだらって考えるだけでいてもたってもいられなくて…

…此処にきてから、毎日必死で、毎日死ぬことや、殺すことが当たり前になって、怖くないわけなかった。
正直、本気で逃げ出したかったし、今だって戦の前は震えが止まらない。
自分が死ぬことも怖いし、相手を殺すことだって…、怖いよ


でも、それでもやっぱり一番怖いのは、周りの人達や、辰馬、それにあんた達がいなくなっちゃうことなの…


ごめんなさい、こんな理由で追い掛けてきちゃって…

でも、もう、独りは嫌なの…っ


あたしも、っ銀時達と一緒に戦いたい…!!
松陽先生を取り戻しにいきたいよ…!!!!』





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