桜/魂


□晴天は曇天に等しい
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「ガハァァァア!?!?!?!?」


天人の体はドシャリと音を立てて俺の目の前に倒れた。
理由は簡単。
俺がこいつの体を真っ二つに斬り裂いたからだ。




−−−あいつは俺達の帰りを大人しく待ってるられるようなデキた女じゃねェと思うがなァ…?−−−−



「………チッ」


ほんっっっとに、ムカつく野郎だぜチクショー



斬っても斬っても、どんだけいるんだよってくれェに沢山いる天人共に対してか、高杉に対してか、それともそれに妙に納得しちまった俺に対してか


どちらにせよ、今の俺は最高に苛立っていた。


容赦なんざするつもりもねェが、いつも以上に残忍に、残酷に敵を斬り伏せる。

血しぶきがそこら中で噴出されるくらいに。
辺りも一面真っ赤だった。

それでも一行に減る気配がない天人共を力任せに倒していく。


「ギャアァァァア!?!?!」
「ウボフゥッ…!!!」
「ガッ…ッ!!!」


汚い断末魔と共に天人の体から飛び出た帰り血が俺の頬を汚した。


こんな姿、あいつに見せられるわけねェだろ……




敵の血がべっとりと付着した刀はやけに重かった。

今日は無駄に晴れていやがるから、血が乾いて硬くこびりつき、余計に鬱陶しい。

雨でも降ってりゃァ、まだこの血も洗い流されるっつーのに


「まぁ…関係ねェか…」

あいつを置いてきたことに後悔はしていない。
むしろ連れてきていた方が俺は後悔に苛まれていただろう。
…だが、どんなに取り繕ったって、本心はわかってんだ、


「…あいつがいなきゃ、晴れてたって雨だって変わりゃしねェ」


空がいくら晴れてたって、晴れやしねェよ…






























「…ハァッ…ッ、ハッ……ハァッ…ハァッ…」


粗方の敵を片付け終えた俺は、刀を支えにしてソッと膝を付く。

血に濡れた地面がじんわりと膝を濡らしたが今更気にすることもない。



「あー…しんど」


早く体力を回復して他の奴等助けに行かねェと…。
他の場所でも、相当の数がいるはずだ。

数で負けている俺達は圧倒的に不利だった。


「っし。そろそろ行く「銀時」ッうおぉおッ!?!?!?!?」


突然背後からヅラの声が聞こえた。


「ヅラァ…てめェかァ…?ゴルァ…」

「…ん?なんだ?そんなに驚いたか?あと、ヅラじゃない。桂だ」


俺の図上から見下ろすようにして繰り出されたどや顔は、むしろ敵は天人じゃなくてこいつなのではと思うほどに俺の癪に触るものだった。


「とぼけんじゃねェッ!!!!!!!!!なんで声かけんのにわざわざ膝かっくん!?!?!?!?バカなの!?ねェバカなの!?死ぬの!?いや死ね!!!!!!!!!」

「ふっふん。効果は抜群のようだな」

「どっかのゲーム風に言うんじゃねェ!!!!!!!!!」



何を言っても無駄だ。
そうだ、こいつは頭はきれるがバカだった。

得意気に鼻を高くするヅラを呆れたような目で見るが、別段奴は気にしていないようだった。



「…さて、銀時」

「あ?」

「引くぞ」



弛みきった顔から一変
真剣な顔つきにかわったヅラはこう言う。

その声も切羽詰まったモノだった。



「思わぬ敵の数に俺達は相当の苦戦を強いている。今回の戦、犠牲者も多い。そろそろ引かねば取り返しがつかなくなる可能性もある」

「…俺達がいけばなんとかなんじゃねェのか?高杉や鬼兵隊の奴等もまだいんだろ」

「いや…、仮に俺達が行ったところで対して変わらんだろう。今回の戦、俺達の敗けだ。ならば、速やかに撤退して次の戦に備えた方が良い」

「……… 」

「俺はこの後まだ戦っている奴等を援護しながら撤退を促す。お前は撤退をしながら俺達の退路が奴等に潰されないように敵を退けていてくれ」

「…わかった」


ヅラにこかされたまま座り込んでいた俺はヅラからの指示を聞き入た後、グッと足に力を入れて立ち上がる。

さっきまでの戦いで負った傷は軽いものばかりだし、ま、問題ねェだろォ



「じゃ、 俺ァ行くぜ」

「あぁ。ヘマはするなよ」

「ったりめェだ」



死ぬのなんざ怖かねェが、あいつを泣かせるのは真っ平ごめんこうむるからな…













晴天は曇天に等しい


(それでも、あいつが傷付くよりはずっと良い)



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