桜/魂


□業火に飛び込むその思い
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『奇遇ですね、お三方』



そう言ったときの三人の顔(そのうち約二名はゲロまみれ)は見物だった。


移動用の小型船に移動してから暫くしてなにやらごちゃごちゃと
どうやら辰馬のヤツがイビられているようだった
一発大砲でもかまして黙らせてやろうかと思った矢先
その声が聞き覚えのあるものだということに気が付いた



もしかしたら、とは思っていたけれど
こんなに早く会えるとは思っていなかった。


辰馬ごと、思いっきり蹴りあげて
ピーチクパーチク喚いているバカ共の上に落とす。

辰馬のことは尊い犠牲と思い、水に流すとして、だ。



口をあんぐりとあけて、信じられないものを見るかのような顔をしている三人の顔はあの頃となんも変わってなくて少し笑えた



「なっ、おま…っ!?!?!?っはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?!?!?」

『うるさっ』



ゲロまみれの顔であたしを指差すのは、あたしの足元で転がっている銀時だった。


なによ、ようやく会えたっていうのにその反応は


イマイチ感動の再会…!って感じに決まらなかったことに不満を感じているなか
いち早く我に帰ったのは同じくゲロまみれで地面に転がっている晋助だった。



「………よォ、来ると思ってたぜ」



そのセリフに少し目を見開く。
そんなことを言われるとは思っていなかった。

相変わらずのその挑発的な笑いはあたしに真っ直ぐ向けられていて…
いや、けどその前に顔洗え



そのあとすぐに駆け寄って来たのはヅラだった。



「な、咲良!
なんでこんな所に…『待った』


今にも説教を始めますと言わんばかりの剣幕でこちらにやってきたヅラにそういい遣る。
ヅラの説教なんか長ったらしくてこんなところじゃ聞けないって


『説教なら後にしてよ?』


あたしがそう言うと、
出鼻を挫かれたせいかヅラは少しムッとしたあと
"まぁいい…"
と、溜め息とともにそう吐いてはあたしをもう一度しっかりと見据えた。


「久しいな、咲良
よくここまで無事で来たものだ」


と、呆れ顔を半分浮かべながらそう言った。



そうそう、こういう反応が欲しかったのよあたしは


へへっと軽く笑い、未だにノビてる辰馬の首根っこを掴みあげながら
"こいつのおかげ"
そう言えば、感心したようなヅラの声が聞こえた。


「桂浜の龍という名も伊達ではないようだな」



コイツ自身の性格は
桂浜の龍なんて恐れられる程のものではないと思うけど。
何度も助けられてきて、コイツの強さはあたしが一番知ってる
コイツがいなけりゃあたしはここまでこれなかったから


まぁ龍っていうよりは狸って感じだけどね
人を化かす天才


そう言って、冗談めかしく笑おうとした時だった


"ふざけんじゃねェッッッ!!!!!"
と、怒号をきかす声が聴こえたのは




「銀時…」


その声に反応して視線をそちらに向けたヅラはその声の発信源の名を呼ぶ。


その男は拳を力一杯握り締めて、歯をギシリと軋ませている。
表情はよく見えないが、怒っているのは一目瞭然だろう。



『………なによ、説教はあとにしてって言ってるでしょ』



"少しは再会を喜んだらどうなの?"
続けてこう言おうとしたとき、その言葉は銀時によってかき消された。





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