桜/魂
□泣鬼
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アアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!と、鼓膜を激しく揺らす雄叫びと凄まじい喧騒が鳴り響いた。
それがあたしの腰にぶら下がっている剣にも振動が伝わっているようで、まるで呼応しているかのようにカタカタと呻き出す。
その刀をそっと静かに抜き出してしっかりと構えれば、いざ
目の前の天人達を斬り殺す
プシャッと敵の血を盛大に被っていく。
汚い、とかそんなことを気にしている余裕はない。
邪念は命を失うことに繋がってしまうから
『はああああああぁぁぁっ!!!!』
明らかに不利なこの状況ではあるけれど、とりあえずな斬らなきゃ始まらない
見た目よりもずっと重たいずっしりとした剣を無くさないようにギュッと握りしめて、十、二十、と敵を斬り殺した。
少し息が乱れてくるが、まだ体力的にも問題ないだろう。
「この軍勢にたった一人で突っ込んで来るとはな。俺達も舐められたものだ。しかもそれが女とは」
おそらく敵の大将であろう天人が吐き捨てるようにそういった。
バカにしたような言い草に、腹が立つ
『はぁ?あんたらなんかあたし一人で十分だっつーの!てか女女って、そんなに女が戦場にいたら悪いわけ!?』
どいつもこいつも、見下してんじゃないわやコノヤロー!!!!
いくつかの斬撃を食らわすが流石敵の大将なだけあって、なかなか手こずる。
しかも、まだまだ敵の軍勢は沢山いて、そいつらも相手にしながら倒さなきゃいけないんだからたまったもんじゃない。
RPGでもこんな暴挙なかなかないわよ!?
カキンッと金属同士がぶつかり合ったような高い音が響く
「くっ」
攻防の中であたしがつけた傷が痛むのか敵の大将は顔を歪める。
それはこちらも同じであるが、意地でも顔に出してやらない
それくらいの余力はまだある
『あら、息が上がってるわよ?もう大人しく降参して殺られる?』
「ざっけるな!!!!人間ごときがなめた口を…!」
『あ、そ』
短く返事を返した直後、ドサリと敵の体が地に伏した。
勿論あたしがとどめを刺したからだ。
大将が殺られて、その部下の天人達が慌てたようによどめきだす。
残りは雑魚の片付けか。
大将戦で、ところどころ怪我をしてしまったが、まだなんとか動けるだろう。
あーでもちょっときついかなぁ
ニッと笑みを浮かべて挑発すれば、天人達は一斉にこちらに走ってくる。
「調子のんじゃねぇぞこのアマァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
『うっせええええええ!!!!てめぇはダイエットの1つくらい成功してから言いやがれええええええええ!!!!』
バッサバッサと薙ぎ倒してそれに比例して血を被る
今ので何匹倒したかな。
気が付けば結構の数が減っていた。
これならなんとかなりそうだ。
って、いや、いやいやいや。
明らかに減りすぎじゃね?これ
なんか一気に減ってるような…
ブシャッ!!!!
あたしが刀を振るったわけでもないのに、突然背後で血が噴出する音が聞こえた。
あたしは驚いて慌てて振り向くと
「すまんのぅ。加勢に来るのが遅のーたわ。ん?主力陣営はおんし一人がか?」
渋い青の戦闘衣装を着た背の高い男が、帰り血を浴びながら、あたしにそう笑いかけたのだった。
泣鬼
(それは、)
(血を浴びることに怯えているくせに)
(気丈に振る舞おうとする)
(小さな女の子とわしが出会った瞬間だった)
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