桜/魂


□届かぬ指先
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その日の先生は、今思えば不自然なほどに

自然で

いつもとかわりなく

穏やかで

でも、それ自体がいつもと違う
あの惨劇の
予兆だったのだと


思う





*


『ん〜…ねむ、』

「おい、咲良。起きろ。朝だぞ。学校だぞ。お母さん朝御飯の支度してるから早く起きなさぁい」

『ん…はぁい…。………は?お母さん?』


気だるさと戦いながら、それに追い討ちをかけてくる朝の日差しとその声に、まだ眠っていたいと言う願望を押さえつけてなんとか意識を浮上させる

が、お母さん?
なんのことだ。
お母さんなんて、あたしにはいないはず…

今、あたしを起こしてくれている人物がいう不可解な言動に不信感を抱き、重い瞼を眉間にシワを寄せながら、こじ開ける


飛び込んできた朝の日差しが目にいたいがなんとか目を開く


「あ、やっと起きたか。もう朝だぞ。早く準備しなさいっ!もうっ」


目を開いて、あたしを起こす人物の確認ができた。
ヅラだ。

ヅラ、ヅラと言えばこの髪、なんでこんなにあたしの顔に降りかかってんの?
あれ、てか近くね?
あれ


『ねぇ、お母さん』

「なによ、もうっ」

『なんでお母さん、こんなに近いの?』

「ん?あぁ、それは…『しねよ』…なんで!?」




“ギャフンッ!!!”っと朝っぱらから耳にさわるヅラの断末魔を聞きながら、身支度を済ませ、死体…もといヅラを引きずりながら、先生たちのもとへむかう


『おはよー』


朝の挨拶と共に部屋に入れば、優しい笑みを浮かべながらおはよう、と返してくれる先生


「朝から元気ですね」

あたしの右手で掴まれてる死体…もといヅラを一瞥してそう言う。


もはやツっこむ気はサラサラないらしい


「あ、晋助と銀時は向こうの部屋にいますよ。一緒に待ってて下さい」


『はーい』



そろそろ手がしびれてきたな。
しかたない。蘇生させるか


『っそーれっ!!!!!!!!!!!』


かわいく掛け声を出しながら、かわいくない馬鹿力でヅラを投げ飛ばせば、目の前の襖を突き破って吹っ飛んでいった。


「「「ぎゃああああああああああああああああああっ!?!?!?!?」」」


運悪く、晋助や銀時にも直撃したようで、彼らの叫び声も聞こえたような気がしたが、ま、些細な問題だ。気にしないでおくとする。



ヅラが壊した(ここ重要)襖を避けながら、部屋の片隅で頭を抱えながら悶絶してる三人をスルーしながら机の前に座る。


「ってめぇ、ゴルァ。何しやがる…!!」


ただならぬ雰囲気を醸し出しながら、一番軽傷だったのだろう晋助が食って掛かってきた。


『朝目覚めたらヅラに襲われそうになってたから、それの制裁をしただけでぇーす!!!!晋助達はそれにたまたま巻き込まれただけでぇーす!!!!』

「たまたま巻き込まれたじゃね…………は?今なんつった?お前」


“誤解だァ!!!!俺はそんなことしてないぞ!!!!”というヅラの意見は耳に入ってないらしい

ま、確実に、ヅラの言うとおり誤解なんだろうが、そこは晋助にはどーでもいいところらしい


「おい銀時ィ!!!!いつまでも意識飛ばしてんじゃねぇ!!!!さっさと起きやがれ!!!!」


どうやら一番ヅラの被害にあったらしい銀時は頭にどでかいタンコブを作りながら気絶していたらしい(てか手当てしてやれよ)

そんな、銀時のケツを蹴飛ばしながらそう言った晋助は、それでも起きない銀時に何かを囁いた。


「っ!?!?!?!?地獄に堕ちやがれヅラコノヤロおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

「げふっ!?!?」


晋助がなにかを囁いた途端すごい早さで起き上がった銀時はそのままの勢いのまま頭突きを食らわす。

もちろん、あたしによって既に瀕死状態にあるヅラに、である。



「てめぇゴルァヅラァ!下着は見たのか!?もうやることヤっちゃったあとってか!?咲良を美味しくいただいちゃいましたってかァ!?てめぇ一番無害そうな顔して何してくれとんじゃあああああああああああ!!!!!!!!!!!俺でもまだ手ェ出してねぇのにっ!!!!!!!!!!!」

「おい銀時。俺にも殺らせろ。ボッコボコにしてやらァ。つか、てめぇも手出しやがったらぶっ殺す」


二人してヅラの着物の胸ぐらを掴みながら、まるで餅つきをするかのように順番にパンチを食らわしていく。
いや、まるでではないか。
現にヅラの顔が餅のようにふっくらと膨らんでいくのだから。



朝の見慣れた情景をあたしは完全に蚊帳の外に追いやって、


「朝御飯の支度できましたよ。さ、食べましょうか」


と、食事を運んできてくれた松陽先生に微笑み、穏やかに食事を済ます。


その後ろでどこのロン毛が集団リンチにあってようが、あたしにはちゃんちゃら関係がないのだ。


そして、松陽先生も、やはりツっこむ気はなさそうである。




さて、ご飯食べたあとなにをしようか。

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