桜/魂
□地固まる
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バシィィッ
試合開始を言い渡させたほほ同時に、けたたましい、竹刀と竹刀がぶつかり合うような音が道場中に響き渡った。
きっと、今日の試合で一番大きな音を立てた、つまり一番強い打ち込みだった。
そのままあたしらは弾かれるように後ろに飛び退き、距離をとる。
お互いを睨み付け、竹刀を構え直す。
相手は銀時なんだ
一瞬でも目を離せば、
やられる。
神経を張り巡らせて銀時の出方を伺っているとき、銀時はフラりと動いた。
来るっ!
衝撃に備えて強く竹刀を握りしめたとき、銀時は予想とは大きく異なった行動、いや言動をした。
「…先生、なんか気分悪ィんでこの試合やめていい?」
銀時の声が無機質にあたしの脳に届いた。
は…?
「それは大変ですね…。良いですよ。体の方しか大事ですからね。銀時は休んでいてください」
なに、いってんの…?
松陽先生がそう返したあとすぐに、銀時は竹刀を下ろしてあたしに背を向けて入り口の方に歩き出した。
具合悪いなんて嘘でしょ?
だって、具合悪いならあんなに強く打ち込めるはずがない
試合することすら、嫌なの?
あたし相手だから?
『………け…な…』
立ち竦むあたしに松陽先生はあたしに他の子と試合を組むかと問い掛けてくる。
けれど、もうあたしの耳にはその声はこれっぽっちも入ってきていなかった。
「咲良…?」
あたしの様子に気付いたのか松陽先生はあたしの名前を呼ぶ。
しかし、そのほぼ同時にあたしは銀時が出ていった扉の方へ走り出していた。
「咲良!?!?」
松陽先生の驚いた声が耳に届いたのは、あたしが道場を出たあとだった。
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