桜/魂
□水銀に溶けて
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『じゃっ!今日の道場の掃除は銀時ね!!』
そう言ってあたしは道場を後にした。
あたしが出た直後に、道場からは“チクショォォォ!”という雄叫びが聞こえてきた。
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―――――
―――
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銀時に掃除を押し付けて、手持ちぶさたになったあたしは寺子屋を徘徊していると
ダンッ
何かにぶつかったような音がして、顔を上げると
『晋助!?』
小さい時から変わらず仏頂面の晋助がいた。
しかし昔に比べて可愛さのカケラもなくて、もともと短気で俺様な奴だったけど、更に俺様に磨きがかかっている気がする。
「あぁ?咲良か。小せェから見えなかったぜ」
上から目線で、含み笑いをしながら憎たらしく言う晋助。
そんな晋助を一睨みして
『晋助もそんな変わんないじゃない…』
極力声を小さくして聞こえないように言ったつもりだが、晋助には聞こえていたようで
「てめェ…ッ」
人一人殺せそうな剣幕であたしを睨んでくる。
何よ。お互い様でしょバカ杉が。
こっちも睨み返して反撃していると
「咲良!!お前また銀時に道場の掃除を押し付けたそうだな!!」
「うおっ!?」
晋助を払いのけるようにして現れたヅラはある意味晋助より凄い剣幕であたしに詰め寄った。
「いつも言っているだろう!!自分の当番は自分で「おいコラ、てめェ…。ヅラァ…」ヅラじゃない桂だ」
ヅラに突き飛ばされた晋助が青筋を立てながらヅラの胸倉を掴んだ。
そんな晋助にヅラは表情一つ変えず冷静にツッコミを入れる。
しかし晋助はしごくどうでも良さそうに自分の用件を話し始めた。
「ヅラァ…、俺を突き飛ばすたァ良い度胸じゃねェか…!道場に来なァ。もはや異論はあるめェ」
それだけ言って晋助はあたしを一度見て、道場の方に向かって歩いて行ってしまった。
「うむ…。仕方ない。説教はまた今度にしておこう。今は試合が優先だ」
そしてヅラもそれだけ言って晋助を追うように道場の方に向かって行った。
その場にはあたし一人がポツリと残された。
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