桜/魂
□夕化粧
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…あれ?
気が付くと辺りはさっきとは打って変わり真っ赤に染まっていた。
夕日はもう半分沈みかけていて暗さが滲み出している。
『あれ…あたしいつの間に眠って…?』
思わぬ状況に困惑していると
「ん、おぉ。起きたんだな」
突然聞こえてきた(実際はずっとそこにいたんだろうが)声に驚いて振り向くと、そこには鮮やかな銀色が夕焼けによって朱く色が変わった銀時がいた。
『あたしが起きるの待ってくれてたの?』
そう言えば銀時は頷いて口角を少し吊り上げた。
「せっかくだしさ、ちょっと話しねェ?」
夕日に負けないくらい紅いその瞳は真っ直ぐあたしを見ていて、あたしは少し嬉しげに頷いた。
と、同時に銀時がグッとあたしに近付いてきて
「…咲良って高杉のこと好き?」
直球に意味がわからない質問を真剣に尋ねられた。
いや、真剣というよりは少し悪ふざけと言うか面白がっているというか、とにかくからかい半分ででも顔は真剣に尋ねられた。
『…うん、好き。晋助は優しいから。でも小太郎も松陽先生も好き』
一瞬面白そうな表情をした銀時だが、あたしが小太郎と松陽先生の名前を出した瞬間落胆したようにうなだれた。
「そういうことじゃなくて…、!?」
何かを言いかけた銀時を無視して、更に銀時との距離を詰めた。
おでこがぶつかりそうなくらいの距離。
「え、えッ!?」
戸惑った様子の銀時。
そんな銀時の紅い紅い目を覗き込むように見据える。
「ちょっ、咲良!?」
銀時の目の色は燃えるように紅い。
『銀時の紅い目…』
“好き”
途端銀時は目や髪だけじゃなくて一気に顔全体まで赤くなった。
少し恥ずかしくて、はにかむように笑うと銀時は更に顔を赤くしてあたしの手を強引に引き、何も言わず寺子屋まで引っ張って行った。
夕化粧
(夕日と夕日に飾られた桜の花弁が染め上げたのは俺のキモチ)
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