桜/魂
□仔狼の緑
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支度をして付添人が待っていると言う場所に行けばそこには前にあたしを鋭い目で睨んできた人が立っていた。
確か、名前は高杉晋助。
つい先刻松陽先生に教えてもらった彼の名前を思い出す。
『た、高杉くん、今日は宜しくお願いします』
あたしがそう言えば高杉くんはあたしに気付いてこちらに視線を向ける。
しかしその目は前と同じく鋭い。
高杉は一瞬あたしを見ただけで何も言わずスタスタと先を歩く。
その重い空気に気まずく思いながらも必死に彼についていく。
『ちょっと待って…!』
あまりにも早く歩くからついていけなくて彼にそう言う。
しかし応答はない。
『高杉くん!!』
もう一度声を掛ければ僅かにスピードが緩んだ気がした。
それが少し嬉しくて頬が緩む。
あぁ、悪い人じゃないんだ。
笑っているあたしに気付いたのかさっきより鋭い眼光で睨まれた。
「…早く行くぞ」
ぶっきらぼうにそういう彼と純粋に仲良くなりたいと思った。
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