桜/魂
□吹き飛ぶくらい、
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松陽さんはクスリと小さく笑って
「私、寺子屋の先生を勤めているんですよ。だから呼び方は松陽さんではなく、松陽先生でお願いします。」
“もしくは、お父さんで。敬語も要りません。”
冗談めかしく松陽さ…、先生はそう言った。
『じゃあ…、松陽先生で』
また松陽先生は嬉しそうに笑った。
あまりに嬉しそうに笑うから、この人は嬉しいの塊なのではないかと思ってしまった。
急に、松陽先生は嬉しそうな顔を一変させて、心配そうな顔になった。
その表情の理由がわからなくて困惑する。
「背中の具合は、もう大丈夫なのですか?」
言われて気付く。
何故だかわからないが、あたしの背中にはとても深い、斬られたような傷があったことに。
背中には ―松陽先生が手当してくれたのだろうか― 包帯が巻かれていた。
『あ…大丈夫、平気…。手当ありがとう』
笑ってそう言えば松陽先生は安心したように少し顔を緩ませた。
「心配したんですよ?あの後急に倒れましたからね」
あの後とは、松陽先生に助けて貰った後のことだろうか?
倒れたって…?
「おそらく背中の傷の出血のせいで貧血になったのでしょう」
あたしの疑問に答えるように言った。
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