桜/魂
□吹き飛ぶくらい、
2ページ/5ページ
彼は一瞬、とても悲しそうな顔をして、あたしの頭の上に手を置いた。
『っ…』
彼はあたしと目線を合わせてゆっくりとこう言った。
「大丈夫です。私は君を裏切ったりは決してしません。安心して下さい」
そして続けてこう言った。
「確かに君を見つけたのは偶然です。しかし私は君の力になりたいと思いました。君を引き取った理由がこれでは、足りませんか…?」
穏やかで優しくて、それでいて強い口調。
その言葉が嬉しくて堪らなかった。
『足りなく…っなんかない、です…っ!』
嗚咽混じりに、そう伝えた。
胸の中は感謝の気持ちで一杯だった。
「名前を、教えて頂けますか?」
名前?
あ…、まだ言ってなかった…。
『結澄咲良、です…』
名前を伝えた途端、松陽さんは嬉しそうに、ただ本当に嬉しそうに笑って
「咲良。これから、宜しくお願いしますね」
と言った。
その笑顔にあたしもとても嬉しくなって、自然に笑みがこぼれた。
『よろしく、お願いします。松陽さん』
.