√3xの心拍数
□√3→1×祭りの後の騒がしさ
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帝光中学の学園祭は外部の人も立ち入りOKのとても大規模なものである。
今も校門前に作った簡易テントに座っている受付のあたしのところに人が途切れることなく来ている。
『はい、パンフレットです。楽しんでいってくださいね』
と、あたしの服の裾が軽く引かれる。
「おねぇちゃん…まだ〜?」
『ごめんね、あと少しであたしの代わりのお姉ちゃんが来るからね』
何故こうなった…、と思わずにはいられない。
あたしの横には迷子が寂しそうな顔で立っていた。
ことは数十分前にさかのぼる。
受付をしていたあたしのところにこの子が一人で来た。
男の子は半泣きで話を聞くと予想通り親とはぐれたらしい。
迷子は生徒会の管轄故、ここでこうしてあずかっている。
あと少しすれば珠央がここにくる、そこであたしは珠央と交代し、あたしは迷子と親を捜索するつもりだ。
と、そこに噂の人がやってきた。
『咲良、交代』
あたしの顔を見てから少し視線を下げた珠央は停止した。
『あぁ、この子、迷子みたいで…』
『あてはついてるの…?』
表情を曇らせると悟ってくれた。
『あたし今からこの子と学校中回って親捜すわ。放送部にも協力してもらうし』
『そう。じゃあ気をつけて…』
『うん。…じゃあ行こっか!』
明るく男の子に言うとあたしはその子の手を引いて、とりあえず放送室へと向かった。
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