桜/魂


□巻き戻しの決意
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あの後、あまり期待していなかった突然の加勢によって、もともと大将の首を既にとっていたこともあり、呆気なく敵の天人達を制圧することができた。

その光景に、気を抜いてしまったのかもしれない。
大量に放出されていたアドレナリンが切れてしまったのか、そんなに酷い傷ではないはずだが鋭い痛みが襲い、大将戦で頭に傷を負っていたことが原因で、あたしはあたしの傍にいた男に寄り掛かるようにして気を失ってしまった。



その男が慌てたようにあたしの体を抱き止めたことだけが覚えている。










*



「カァァァ!やっ、お目覚めになられましたか!結澄殿!」


目覚めたときはまさに驚愕だった。

いや、ほんとに、お前誰だ?ってくらいに驚愕だった。

人生で一番驚いたかもしれない


『……は?』


思わず間抜けな声を出してしまった。
いやしかし、これはいたしかたないと…思う…
いや、うん


戦前までは、あんなに理不尽な戦闘を強いてくるほどにあたしを嫌っていた隊長が、ゴマをするように手を擦り合わせてはあたしの機嫌をとるかのような態度で話し掛けてくる。

これはもう驚き以外の何者でもない。


いや、あたしが気絶している間になにがあったって真面目に問い詰めたい。


『…っぅ』

「結澄殿!安静に!」


おそらく倒れたのは貧血によるものだったのだろう
突然起き上がったせいか、クラリとした感覚がおそった。



『いえ、大丈夫です。それより…その、あたしが倒れたとき、あたしをここまで連れてきてくれた人って誰なんですか…?』


おそらくあたしが寄り掛かってしまった人で間違いないのだろうが、あんな人はこの隊では見たことがない。
まぁ、この隊の人間ならあの状況であたしを助けにきたりはしなかっただろうけれど


「あ…た、辰馬殿…ですね、いえございます!!!」


あたしがその会話を出した途端、面白いレベルで怯えたように体をビクつかせた隊長は、まさにおそるおそるといったような感じでその名前を口にした。

ていうか、仮にも隊長がそんなビクビクした態度でいいのか。


『辰馬…ねぇ、』

隊長から教えられた、その男の名前をきっちりと記憶する。


まぁ、助けられたわけだし、一応礼くらいは言っとかないとねぇ?


うっすらとしか顔は覚えていないが、まぁ周りの奴らに聞けばわかるだろう
とにかく、この医務室から出なければ始まらない

今度は目眩のようなものはすることはなく、慌てる隊長を尻目にあたしは医務室から出た。



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