桜/魂


□影を隠してまた踊る
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『甘味処?』

「お、おう…」


一体どういう風の吹きまわしだろう
最近何かとあたしを避けていた銀時が、突然あたしに甘味処に行かないかと誘ってきた。

銀時は視線を斜め上に傾けながら、しかしチラチラとこちらを伺うようにして聞いてきた。


何かよくわからないが、ここ最近あたしを避けていたのは、あたしが銀時に何かしたからというわけではないらしい。
なら、尚更何故か気になる。

これは銀時に聞くいい機会なのでは、とあたしは銀時にOKの意を示そうとしたが、そこでハッと気付いた。


今日これから、松陽先生のお使いで、晋助と隣町まで行かなくてはいけなかったのだ。


『あー…、今からあたし松陽先生のお使い行かなきゃいけないから、その後でもいい?』


結局こうすることにした。
隣町と行っても此所からかなり近い所にあるし、急げば十分甘味処にも行けると踏んだからだ。

あたしがそう言うと銀時は一瞬びっくりしたように目を見開いて、少し嬉しそうに“マジでか!”と叫んだ。


そんな様子の銀時を見てあたしも軽く笑えば銀時は頬をポリポリと掻きながら、また視線を斜め上へと戻した。


『…1つ言っとくけど、奢らないわよ?』

「………………おう」



その長い間はなんだ。
溜め息を吐きたい気分になったが、そろそろ晋助が待っている時間になっていることに気付いた。


待たすと、荷物を全て持たさせられる羽目になりかねない。
気分的に冷や汗を滴ながら、銀時に“じゃあ、また後で”と言ってその場をあとにした。




**






「遅ェ……」


慌てて待ち合わせ場所に行くと既に晋助はそこにいた。
間違えた。鬼はそこにいた。

すっごい不機嫌そうに眉を潜めて、黒いオーラが体中から吹き出している。



これでも急いだのに…


少し舌打ちしたい気分になりながら、ごめんごめんと謝ると、晋助は“ハァ…。反省してねェのに謝んじゃねェよ”と呆れたように頭を抱えた。


なんだくそぅ
お見通しかよ…


「ほら、行くぞ」

『んー、了解』



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