桜/魂
□吹き飛ぶくらい、
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『……んっ…』
目が覚めるとあたしの目の前には天井が広がっていた。
ボーッとしている頭を叩き起こして、今の状況に至るまでの経緯を思い出す。
『吉田、松陽…』
彼のことを思い出して、弾かれたように部屋を見回して彼を探す。
しかし、彼はどこにも見当たらない。
自分の顔に影がかかるのがわかった。
あたしを助け、一緒に来ないかと言った彼。
やはり、信じたのは間違いだったのだろうか。
あたしは何処かに売られでもしたのか…。
あたしの心は不安に埋め尽くされた。
別におかしいことじゃない。
甘い言葉には裏がある。
見ず知らずのあたしを何の裏も無く匿うと言う方がおかしいのだから。
そんなことばかり考える。
信じた自分が馬鹿らしく思えて、自嘲気味に笑った。
すると、突然襖が開く音がした。
それと同時に、
「あぁ、起きられましたか。もう大丈夫なのですか?」
その声は、先程まで裏切られたとばかり思っていた吉田松陽の物だった。
『松陽…さん』
彼の姿を見た途端、さっきまでの不安は一瞬で消えてしまった。
しかし、理解できない。
『なんで…っ?』
利益の為にあたしを引き取ったのではないとしたら、どうして…
『どうして得体の知れないあたしを引き取ったんですか…?』
あたしがそう言った時、彼はとても驚いたような表情をしていた。
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