pale cherry blossoms...
□大福の行方
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-コンコン-
「風間さん、いらっしゃいますか…?」
『…入れ』
「失礼します…」
いつもは滅多に座っていない文台の前に風間さんは座っていた。
こちらからでは背中しか見えないが、珍しく真面目に仕事でもしているのだろうか?
『何か用か…?』
「あ…はい。不知火さんを見かけませんでしたか?」
『不知火…?あいつに何か用なのか?』
「えぇまぁ…」
『何の用だ…』
「…戸棚の中にあった大福がなくなってたんです」
『…ほぅ』
「不知火さんと決まった訳ではないんですが…前に無くなった時は不知火さんだったので、もしかしたらと…」
『なるほどな。不知火には俺から言っておこう』
「え…?」
『俺から言っておくと言ったんだ。なんだ…不服か?』
「いえ…」
『ならば黙っておけ。…そもそも俺以外の男を探しているといのも気にくわん…(クルッ)お前は俺だけを見ていればいいのだ』
「あっ…」
『なんだ?あまりの俺の格好良さに惚れ直しでもしたか?』
「いえ、あの…」
『ふん。隠さずともいい。素直に認める事を許してやる』
「いえ、ですから…」
『まぁ、大福ごときで騒いでいるというのもどうかと思うがな。我が妻だ。愛嬌として目を瞑ってやる』
「お願いですから話を…」
『不知火も不知火だな。あんな甘い物を食うとは…奴が甘党だとは知らなかった』
「ですから…!!」
『不知火には俺から言うと言っただろう。少しは黙って聞けんのか…?』
「あの!!風間さ…」
「「風間」」
『天霧か…ちょうど良かった。不知火を見なかったか…』
「「見ておりません。それより風間。それはどうしたのです?」」
『何がだ…』
「「口の周りに粉と餡が付いています。(スッ)これで拭いて下さい。他のものに見られては示しが付きません」」
『…』
「「それでは私はこれで(ペコ)」」
-パタン-
天霧さんが居なくなってから、部屋に流れる気まずい沈黙…
『おい…』
「…」
『おい!!』
「はいッ!?」
『…振り向いたのだ、気付いていなかった訳はないな』
「…はい」
そう。
文台に向いていた風間さんが振り返ると、口の周りには粉と餡が付いていたのだ。
大福を食べた動かぬ証拠があったのだ。
『何故言わなかった…』
「言おうとしました…でも、風間さんが話を聞いてくれなかったんじゃないですか…」
『ふん…とんだ恥さらしだ。俺が何かを言えば言うほど自分を追い詰めていたわけだ…』
「はい…」
『ふん…』
「あの…」
『なんだ。大福を食べた事なら今更謝らんぞ…』
「そうではないんです…」
『ならなんだ…』
「あの大福…結構前に買ったものなので…。その…お腹…大丈夫ですか?」
『それを早く言えッ!!』
「す、すみません…;;」
…後日談
それから3日程、風間は床に伏せていたそうな。