DRRR!!

□とある喧嘩人形と情報屋
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ああ、空が青い。
いつもとかわりなく青い。
今日もまた、いつもと同じように一日が始まる―……はずだった。

――――――――――

今日は早く仕事が終わった。
暇だったから池袋をブラついていた。

「―…あ。」
黒い服に黒いズボン。
個性的なファーコートから見える絹のような黒い髪。
―ノミ蟲野郎がなんでいんだよ
自販機に手をかけた、その時。
―バサッ―――
黒い人が倒れた。
街行く人達は二、三度振り返るが知らん振り。

俺はそのまま放って置けば良かった宿敵を、何故か運んでやっていた。
「…軽いな、コイツ…飯食ってんのか?」

届くはずも、ましてや届けるつもりも無い言葉が通り過ぎていく。

―あー…、何やってんだろ、俺…放って置けば死んだかもしれねえのに…

「…臨也と同じ匂い…ここか?」
匂いを辿りながら電車に乗ったりして来てみた。
視線が痛い。

「たっっっけえマンションだな…」
ため息しか出ないような高級マンションだ。
入ろうとすると―…

「あれ?臨也さん?」

―女の声。誰だ?
気になって振り向こうとしたら背中に背負ってた黒い物体がモゾ…と動いた。
起きたらしい。

「…………ぅ…?あ、れ…瞭、麗…?」
間抜けで、力の無い声が聞こえた。
思った以上に具合が悪いらしい。

「………って、し、シズちゃん!?な、ななな、何でこのっ…!!?」
ああ、この状況が呑み込めてないな、当たり前だけどよ。
大っ嫌いな怪物の背中に乗ってるなんて思わないだろうし。

「あー…えーと…取り敢えず、中に入りましょうか?」

さっき臨也が瞭麗と呼んでいた女が言う。

「あぁ…、そうだな。
流石にこのままは辛い。」
ふいに臨也が「えっ…」と驚き、顔を赤らめるのが見えた。
何故だかはわからない。

―――――――――――

「うっわ…スゲエ広い…」
臨也の家に来るのは初めてだ。
やっぱり金持ちなんだろう、デカイし高そうだ。

「別に普通だよ。まあ、逆に面倒だけどね…ゲホッ」
痛いなら喋んなよと言った。なんだか心配してるみたいだったから、「…俺にうつるじゃねえか」と、付け足した。
バレてることだろうな。

「あー、シズちゃん俺の部屋はこっち…」
俺の服を掴みある一部屋を指差す。

「わかった。寝るんだろ?」
こくりと頷いた臨也に何かを感じた。何かはわからない。

部屋に入り臨也をベッドに入れてやった。
俺の布団と違ってフカフカで、臨也の匂いがする。
良い匂いに感じた自分が変だと思った

「ふぅ…。ごめんね、ありがとシズちゃん」
珍しく純粋に、無邪気に笑った。
何が嬉しいんだろうか。

「別に。気にするな、気にしたら殺す」
軽く冗談を言ってみた。俺も冗談を言った自分に自分で吃驚した。

「…やっぱりシズちゃんは優しいなあ…」
と、臨也はポツリと言った。
――熱で頭が可笑しくなったか、コイツ?

などと、考えていたその時だった。

グイッ

襟元を引っ張られバランスを崩し前に倒れた。

「………っん………!?」
俺の目の前には綺麗な赤い目。臨也の目。
口には何やら温かく、柔らかいものが俺の唇と触れ合っている。
……………臨也の、唇。

臨也にキスされたと気付くのはもうちょっと先の事。
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