―龍の孫娘―

□漆
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「くっそう、血が止まらねぇー。黒羽丸はまだなのか!?」

ゼンの屋敷では、ゼン、ささ美、トサカ丸が翠雨の止血に尽力していた

「っゲホッ」

咳き込むだけで、血が吐き出された


「翠雨様、もう少しの辛抱ですっ
もう間もなく、黒羽丸が帰ってきますから!!」
体を横に向かせ背中を懸命に擦りながら励ますささ美


バッサバッサ

「戻って来たっ!
遅いぞ黒羽丸!!…ってリクオ様ぁ!!

それに、なんで陰陽師の娘が入るんだ!!」


そう、そこにいたのは
リクオ、ゆらとつららたち側近がいた。ほかの妖怪たちは帰ったらしく、
つららたちは心配で一緒に来たようだ


今来たメンバーは翠雨の姿を見て驚愕した

それもそのはず…
今の翠雨は真っ白だった着物を真っ赤に染め、血溜まりの中にいたのだ

もちろん、ゼン達も翠雨の血で所々赤くなっていた…


「っ、症状はなんや!」
一瞬言葉を詰まらせたゆらだが、ことがことなのですぐに動いた

「あっあぁ。………」

ゼンから翠雨の症状を聞いたゆらはテキパキと指示を出す


「まず、酒を出来るだけ沢山準備して!!
あと、ここにある薬を見して、
それ見て薬を作るから。
薬が出来るまでは、とにかく、止血して、傷口を押さえて!そして酒で傷口を消毒して、かなり痛いだろうけど、」

そう口早にいうとゼンと共に奥の薬へと行った

そのあとは、ゆらに言われたとおりに、
皆で傷口を押さえ、酒を傷口にかけ消毒した

ゆらに言われたとおりに傷口に酒をかける度に翠雨は顔をしかめ唸っていた


「!!!っ、うっ!!あっ!!」
相当、傷口に染みるらしく下唇から少し血が滲むほど咬み、堪えていた



「薬が出来るまでの辛抱ですっ!!頑張りましょう!」

そう言い、翠雨を励ますが
もう、翠雨には声を出すことさえきつくなっていた

その間にも、皆は手を止めず傷を押さえ、酒をかけ続けた

血の勢いはおさまってきた

だが、もう随分と血が流したため、
次第に翠雨の意識が薄れていっていた…

「しっかりしろ!!翠雨!!
俺はまだ、お前との約束を守っていねぇー!

お互い当主と総大将になろうって言ったじゃねぇか!!
約束破る気か!?」

肩を揺すってみるが反応が鈍くなっていた


スパンッ!!!

勢い良く襖が開いた

「待たせたな!!」
勢い良く襖を開け現れたゆらの手には小瓶があった

「早く、飲ましてな。
効き目は抜群の筈やから」
そう言い、その小瓶をリクオに渡した

リクオは、翠雨を抱き起こし、
小瓶の蓋をとり、自分の口の中に流し入れた


そして、翠雨の口に自分の口を重ねた

ツーと口元に薬がこぼれた


それを拭い、また翠雨を寝かせた
周りにいた者は、 静かにその様子を見ていた


「いい薬草ばっかだからいいやつが作れた。だが、もう二度と妖怪なんか助けん。今回は翠雨だから助けたんだからな!!」

「そうかよ、まぁ助かったぜ」
後ろではゆらとゼンが言い合っていた


突然目も開けられぬほどの風が吹き荒れた


「っ!!なんだ!!」
庭を見るとそこには…1頭の龍がいた

白い鱗に、青い目、光のぐわいで濃い青と淡い青に変わるたてがみ

その青い龍はじっと部屋の中を見ていた

(ほ、本物の龍だ…)
初めて目にする龍に驚き固まる皆

そんな中ゆらだけ別のことを考えていた
(翠雨と色違い…綺麗やな)


すると、風が吹き、龍の鱗が一気に剥がれていった

それは、まるで桜の花びらが散っていくようで、儚げで、綺麗だった

風がやみ、龍がいたはずの所には、一人の女性が立っていた


淡い青の着物を纏い、青い髪、青の瞳をした、美人が立っていた


「翠雨っ!!」
その女性は、翠雨のもとに駆け寄った

翠雨の状態を見た瞬間、表情が曇った。

そして、すぐ横にいたリクオの胸ぐらを掴み前後に揺すった

「ねぇ、翠雨は無事なの!?
ねぇ!!どうなのよ!?ねぇねぇ!!


早く答えなさい!!
あなたを絞め殺すわよ!!」

後半は、もはや脅しになっていた…

リクオは、グワングワンと揺すられ、目を回していた


「若を離してください!!翠雨様は無事ですから!」

慌ててリクオと女性の間に割り込み止めさせたつらら


無事と言う言葉を聞き、
ホッとしたようでリクオを掴んでいた手を離した

「良かったわ…」

「あの、あなたは…」

胸に手を当て肩の力を抜いた女性に恐る恐る尋ねた首無

「あ〜、そうね。知らないわよね、
私は龍谷 翡翠、翠雨の母です」



「「「え〜!?、翠雨様のお母様」」」
ニコリと微笑む女性に側近たちが驚き固まった


「そんなことより、一体何があったの!?
この子がボロボロなんて、有り得ないわ!」

どうなのよ!というようにつららの肩に手を置いた

翠雨は今、
リクオの隣で規則正しい寝息をあげていた




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