―心なき歌姫―
□初めの始まり
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そして翌日
昨日の天気とは一転し、空には雲が幾重にも重なり曇天となっていた
月夜は左腕を痛めていたので今は固定され首から吊していた
始まった葬儀には多くの仕事の関係者が訪れ2人の死を悼んだ
葬儀に参加してくれた人一人一人に挨拶をして回った
「今日はありがとうございます」
今度は父が勤めていた音楽会社の人に挨拶をした
「いいんだよ。普段お父さんにお世話になっていたんだし…それより、君は大丈夫かい?」
「えぇ…、大丈夫です。」
無理に笑って見せているのが目に見える笑みを浮かべた
「……そうかい?まぁ、何かあったら頼ってきてくれ。君のお父さんには沢山、恩があるからね。」
「はい。ありがとうございます。では、まだ挨拶まわりが終わっていないので失礼します」
ぺこりと頭を下げ、挨拶まわりを続ける
去っていく月夜の背中を見つめて、
「辛いだろうに…目の前で2人とも失ったのに、顔を出そうとしないなんて…。
この音楽界で2人が抜けた穴は大きいな…」