―心なき歌姫―
□初めの始まり
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「そう言えば…月夜は将来何になりたいんだ?」
バックミラー越しに視線を会わせる父
「実はね…お父さんやお母さんのように音楽関係に行きたいんだ。
私、歌を…歌いたいんだ」
頬を赤くしポリポリと掻く
「そう。月夜は歌が上手だからね。良い歌手になれるわ」
嬉しそうに頬を緩め、優しい視線を送る母
「そうか…歌手か。月夜は顔も良いからアイドルにもなれそうだな。
よしっ折角だから、将来のアイドル歌手のお手並み拝見だな。父さんと母さんがプロの目で聞いてやろう」
「本当!?じゃあ聞いていてね!!」
小さく息を吸い込み歌い出す
鈴の音のような高く澄んだ声が紡だす、彼女の世界へ導くように
不安定な高音に思えて、芯はしっかりと根付き支えていた
前の座席に座る二人は我が子の思わぬ実力に頬を緩めて優しい眼差しをしていた
歌い終わり、ふぅと一息ついてから月夜は前の二人に目を向ける
「ねぇ、いまのどうだった?」
「素敵ね…。きっと月夜は歌の神様に愛されているのね」
「あぁ。月夜はアイドルの原石だ!!きっと良いアイドルになれるな!!将来が楽しみだな」
ニカッと微笑む父に
「そんな大げさだよ。私より凄い人はたくさん居るよ」
「そんな謙遜しないの月夜。あなたは将来、きっと良いアイドルになれるわ。父さんと母さんが保証するわ」
顔を赤くし俯く月夜に、にっこりと微笑む母
車内に幸せな雰囲気が漂う
そんな幸せは次の一瞬で全てが変わった