哀しみの先に

□第二章
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廊下に出たノアはルフたちにアラジンが居るところを聞いてそこに向かっている


アメリーも後ろから着いてきている


ノアは立ち止まり振り返りアメリーを見やる


「アメリーはハルトの方に行って、彼と一緒に怪我人の手当てに回って。あとは私一人で大丈夫。彼とゆっくり話もしたいしね」


「…承知しました」

アメリーは渋々と言うようにきた道を引き返した


アメリーの背中を見送ってノアはアラジンが眠る部屋に向かった


ルフに導いて貰って一つの部屋に入る


ベッドの上で眠る衰弱したアラジンの姿にくっと口をつぐんだ


ベッドの横にやってきて優しく頭を撫でてやる



枕元にある笛に目が行く


そこにはあったはずの八芒星が消えて何もない


笛をさらりと撫でて手を翳したまま目を瞑った


翳した手に魔力を集めていくとノアの手にだんだんと白い羽が現れてくる


どんどん魔力を手に込めていくと少しずつ意識がすっとどこかへ引っ張られていく

ノアは逆らうことなく流れに任せた


















――――――――――――――――――――――――――――

「ここにお客さんなんて珍しいね」




男性の声がし、閉じていた目を開けると目の前には頭だけの好青年のジンがいた


「貴方ともあろう人がこんな姿だなんてねぇ。かわいいわ」

「聖宮の番人がみっともない姿だな」


後ろからした女性の声にバッと振り向くとそこには白い翼と角を生やし優しく笑うカイムとマントを靡かせ少し見下すような視線を送るアスタロトの姿があった



「アスタロトも着いてきたんだね。心強い人が増えたね」


フフと笑うノアにアスタロトはぷいっとそっぽを向いた


「別に我が王のためではない。マギの為だ」

「ウフフ。アスタロトはノアちゃんに甘いもんね。勿論私もだけれどね」


「貴様と一緒にするなカイム」


「あら、そんなこと言ってホントは嬉しい癖に…可愛いわね」

「私は可愛くなどない!!」




なぜだか言い合いを始めたカイムとアスタロトにノアは苦笑を漏らすのだった


彼も微笑むのだった

「アハハ、相変わらずだなあの二人は…。




そんなことよりどうして君は此処に来たんだい?」


彼、ウーゴの問いにノアは彼を見つめる

「君の主、アラジンを助けるにはどうしたらいい?


それに君自身を助けるにはどうしたらいい?」



それにウーゴは残念そうに眉に皺を寄せた

「それはできないんだ。君がいくら魔術師であろうと、変えることの出来ない事なんだ」



魔術師、それは己の強い思いを念に変えルフから任意の力を借り、その念を実現させる魔術を使う人の事。

魔術には数多くの条件や代償などがあり、禁忌とされている術の一種



「知っているのか!?私が魔術師である事を…」

ノアは自分の部下の四人将たちしか知らないそのことを知っているウーゴに驚いていた


「うん。知っているとも。君の周りのルフが教えてくれたんだ。彼らは君にとても協力的だね。優しく強い色をしている。


おっと話が逸れちゃったね…


君がアラジンや僕に出来ることはないよ。

全てはソロモンの教えだからね。あらがうことが出来ないんだ。君に出来ることと良えば、アラジンを気にかけてやってくれないかな?

あの子は少しばかり無茶をする、今回のようにね。だから、気にかけておいてはくれないかな?」

優しく微笑み首を傾(かた)けるウーゴ

「わかった。でもそれでは君に対して出来ることがないじゃないか」


「ふふ、それならもう既にやって貰ったよ」


もう既に貰ったと言うウーゴにノアは首を傾げた

自分はまだ何もしていないのに何故?




「君からはたくさん魔力を貰ったよ。今も僕に魔力を注いでいるね?もう十分だよ。これだけあれば、彼を此処に呼ぶことが出来るからね。だから大丈夫。君はもう向こうの世界に戻った方がいい」



そういい悲しく笑う彼

するとノアの体が段々と透けていくのだった



ノアは自分の透けている手を見つめた


「君はそれでいいのか?

主人の成長を傍で見ていたいとは思わないのか!?もっと貪欲に望んだっていいじゃないか!!」

ギュッと拳を作った

「何故望まない!?何故そんな悲しい顔をするんだ!?

私なら「いいんだ…」


私ならその望み叶えてやれる。と言おうとしたノアだが、ウーゴによって遮られた



「いいんだ。もう覚悟は決めているから…。


彼を、アラジンを頼むね

不死の女王ノア…ありがとう。君は心優しい。自分を犠牲にして人の幸せを願う心優しい子だ。どうか君が幸せになれますように」


ウーゴは最後とばかりに満面の笑みをノアに送った



ノアはそれを最後に意識が沈んでいった


ノアのあとを追うように透けて消え始めたカイムとアスタロト

今まで主をそっちのけで言い合っていたが、時間が来たとわかり言い合いを止めウーゴに視線をやった

「さらばだ聖宮の番人よ。我が王が世話になったな。」

「もっと早くに貴方に会って話したかったわね。こんなに素敵な方だったとは。勿体ないことをしてしまったわ」

手で口元を隠しクスリと笑うカイムにウーゴは恥ずかしそうに顔を逸らした

「やめてくれ、そういうのは慣れていないんだ」

「ふふ。冗談よ。

私たちの全てはノアだから安心して。

お別れね…全てはソロモンのお導き…。

一回で良いから貴方の本当の姿を見てみたかったわね」

クスリと笑い消えたカイム


ウーゴを赤面して俯いてしまった


「ふん。初だな。折角格好いいのにそれでは勿体ないな。」


鼻で笑うアスタロトに今度は苦笑するしかないウーゴ

「では、さらばだ番人よ」
ニッと笑い消えたアスタロト


「本当にあの二人には適わないな…」

消えた二人が居たところを見つめため息をはいたウーゴであった




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