哀しみの先に
□第二章
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一時期アジト内が騒がしくなったがノアたちは動くことはせずに当てられた質素な部屋でずっと水晶を覗いていた
すると扉を叩く音がした
「ノア、シンがあなたを呼んでいます。一緒に来てくれますか?」
扉の向こうから聞こえたジャーファルの声に二つ返事をする
「分かった、今行くよ。
アメリーも着いておいで」
ノアは立ち上がると水晶から手を離し愛刀を片手に部屋を出る
ふよふよと水晶は浮いたままノアの周りに漂っている
後ろにアメリーも着いてきている
部屋を出ると廊下で待っていたジャーファルは驚いた表情を見せる
ノアは驚いたジャーファルに驚いた
「どうしたのジャーファル?」
「あ、いえ。先ほどと雰囲気が変わって見えたので…。ノアはそうやって飾った方がより綺麗に見えるので、少し勿体ないなと」
ジャーファルは残念そうに息を吐いた
「そう言われても、私は着飾るのはあまり好きじゃないからなぁ。
これだってアメリーが好きだからやった訳であって、自分だったらやらないよ」
そういうと何故か後ろにいるアメリーも揃って溜息をついた
「えっ?何二人して溜息ついているの?幸せ逃げちゃうよ」
自分の事を分かっていないノアに二人は肩を落とすのだった
「アメリーさん。もっとノアを着飾って上げて下さい」
「えぇ、大丈夫です。国にいる間はうんっと飾りますので、ご心配なく」
コソコソと話す二人にノアは首を傾げるだけだった
ジャーファルについていくとひつの部屋があった
「シン、ノアを連れてきましたよ」
入ってくれと言う声で部屋に入った
部屋に入るとシンドバッドとマスルールがジャーファル同様驚いていた
ノアはそれに溜息をつくのだった
「そんなに変わって見えるのかな…
それより、話があるんでしょシンさん」
ノアはドカリとシンドバッドの正面の椅子に腰掛けた
「大方、さっき此処に来た副王の話でしょう?」
「知っていたのか!?」
シンドバッドはさらに驚いていた
「えぇ、全て見ていたわ」
「見ていたって貴方はあの場にいなかったのに何故?」
ジャーファルの疑問にノアは指をクルリと回す
すると今までノアのお腹の周りに漂っていた水晶が机の上にゴトリと乗った
「これで見て、聞いていたわ。
この国もふざけたことをするようになったわね。国民を担保に煌帝国からお金を借りるなんて…現王はクソブタね。あり得ない。
先王の時の方がよっぽどましね」
ノアの毒舌に誰もが固まった
ただ一人、アメリーだけは普段通りな王の姿に驚くことは無かった
「…ノア、その水晶は魔法道具なのか?」
ノアの豹変っぷりに驚きつつもシンドバッドは話を進める
「これは私の魔装。さっき見た全身魔装と同じ金属器のものでね。
能力は全ての声が聞こえ対話できるようになる。風や海、自然の声、ルフの声も聞こえるわ。
勿論、人の心の声も聞こうと思えば聞こえる。でもそんな人の心を覗くような悪趣味なことはしない。
この水晶はルフたちが見せているの」
凄いなと目を見開いたシンドバッドだったが、本題に入るべく大きく息を吸って吐いて切り替えた
手を組みじっとノアを見つめた
「今回のバルバッドでの件、どう思う?」
ノアはコロコロと指で水晶を転がす
「そうね…バルバッドへの煌帝国の介入は分からなくもないね。侵略国家なら新たな地と貿易が盛んなバルバッドを押さえたいと言うのは分かるわ。
でも、いくらなんでも此処までは行かないはず。
この国の空気は淀みきっているわ。黒いルフに溢れ始めている。大地が鳴き始めてしまったもの。早くどうにかしないと、ここはいずれ不毛の大地になるでしょうね。
この件、奴らが関係しているのは間違いないでしょう。
シンさんだって分かっているから手を貸しているのでしょう」
水晶から目を離しシンドバッドを見つめる目には哀しみの色と強い決意があった
「あぁそうだよ。
それとノア、
アラジンが倒れた」
「えっ!!?」
ガンッドッ
「いっ!!?
な、何があったの?確かに彼の周りのルフたちは慌てた様子だったけど、倒れた?」
驚き慌てて立ち上がると机に脚をぶつけ、その反動で転がり落ちた水晶が足の上に落ちた
思わず後ろに控えていたアメリーがその痛そうな音に顔を歪め駆け寄るが、
そんなのお構いなしに机に手を突き身を乗り出し、シンドバッドに問いかける
「落ち着けノア。彼は金属器に魔力を送り続けていたんだ。目の前でジンを破壊され、紋章が消えひどく取り乱していたんだ。魔力を送ってどうにかしようとしたのだろう。取り敢えず今は大丈夫だ」
シンドバッドの説明を聞いてホッと詰まっていた息を吐いた
「そう、あのジンは彼にとって特別なものみたいだね。どうにか出来ないかな…。
あ…。
話は終わりでしょ?私もう戻るね」
何か閃いたようでノアは嬉々として席から立ち上がった
シンドバッドもノアの考えていることが分かったようで溜息を着いた
「ノア、無理だけはするなよ。お前のそのいたずらをやろうとするような笑顔は昔とちっとも変わっていない。無茶をする時にする笑顔だ」
「フフ、善処しますよ」
そういうと扉を開けて部屋を出ていく
ノアの後を水晶二つがふよふよと浮いてついて行く
その後ろにアメリーがついて行く
アメリーは扉の所で一礼して扉を閉めた
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