哀しみの先に

□第二章
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金属器の笛の中へ消えていったジンをただじっと見つめていた
周りでは煌帝国の兵士が暴れ回っている

ノアはしばらくそれを見つめ、そっと視線をアラジンと対峙していた紅玉に向けた






「もういいでしょう?ジュダルをやったジンは消えた。兵を退いてはどう。無駄に人を傷つけて何がいいの。皆が悲しむだけよ。」

アラジンも紅玉も突然の第三者の声に驚き手を止めた

ノアはゆっくりとアラジンの隣にやってきてポンポンと頭を撫でて微笑んだ

ノアを見上げていたアラジンは突然の事に驚いたが、すぐに彼女の周りにいるルフに目が行くと大人しくした


「君のジンはまだ死んでいないよ。だから一旦杖を下ろして」
アラジンは言われたとおりに構えていた杖を下ろした


それを見てノアはいい子ねと囁き頭を撫でる


紅玉は突然遮られたことに若干の苛立ちをおぼえた

「五月蠅いわねぇ。何をやろうと私の勝ってでしょぉ?」


「それが皇女の言葉とは思えないわね。我が儘な言葉…。それがどれだけの人を不幸にするかなんて貴方は知らないのね。」


ノアの皮肉めいた言葉に紅玉は怒りを露わにし、武器に魔力を送り出した


だがそれは後ろから延びてきた手に掴まれることによって魔装が解けた


「やめてくれ、お嬢さん!!」


魔装が解けたことで地面に座り込んだ紅玉
「何よっあんた!!?」




ノアは久々にみた自分の恩人の変わらぬ姿になんだか少し笑いが溢れた


クスッと笑うと下から不思議そうにこちらを見上げるアラジンと視線が交わるが、何でもないというように撫でてやると納得したようで視線を戻した


「いっいつまで握ってんのよ」紅玉は慌ててシンドバッドの手から逃れた


「これは失礼、お嬢さん」



シンドバッドは問いかけ、確信を言った

「お嬢さんは煌帝国の皇女で間違いないね?」



「あ、あなた…誰?」



「私はシンドバッド。シンドリア国王シンドバッドだ。


そして、向こうにいる彼女はハイノイ王国女王ノア・ハイゼンだよ。」


紅玉が一瞬ビクついたのを見てノアは苦笑をする

紅玉の顔は心なしか赤くなっている
七海の覇王恐るべし、とつくづくノアは思っていた



「あっあなたがシンドバッド王…。


あちらの方が"不死の女王"」

わなわなと少し震えだした紅玉
その震えは怒りから、密かに尊敬の念を抱いていた不死の女王にあえた事への喜びか、はたまた一国王に向かって吐いてしまった暴言に対しての恐怖かは分からない


「私は一国王として、訳あってこの国に滞在しているのです。

もし…貴女もそうならば、しかるべき場所でお会いしたいものだ」


「王宮で会いましょう紅玉さん。待っているから、今度はちゃんと皇女としの貴方がみたいわね」



シンドバッドとノアの言葉に俯いてしまった紅玉



だが小さく、わかったわよぉと呟き立ち上がった




「帰るわよ」

「えっ?良いのですか姫君」

「いいから帰るのよ」



そういってあっけなく退散していった煌帝国にシンドバッドとアラジンは惚けてしまった


ノアはクスクスと笑うのだった







戦いも終わり怪我人を運ぶ人たちの声がする中、シンドバッドは久々にあった家族に声をかけた


「久しぶりだなノア。見違えたぞ。新しい金属器か?」


ノアも久しぶりにあう恩人に笑顔がこぼれる

「えぇ。この昨年新たに攻略しに行ったんですよ。中々楽しかったですよ」


「迷宮が楽しいなんて、ノアくらいしか言わないと思うぞ。


いい加減魔装を解いたらどうだ?長時間やっているのは疲れるだろう」


「あ、忘れてた」


行けない行けないと慌てて魔装を解いていく

ノアは目を閉じると風が巻き上がりキラキラと光になって魔装が解ける


普段の黒髪に碧い瞳に伝統的な長い袖をもった服装になる




「っと、大丈夫か?フラフラで立てないじゃないか」


魔装が解けると一気に体の力が抜け、膝から崩れ落ちるのをシンドバッドによって肩を抱き留められるが一向に力が入らない


「さすがに長時間は辛いね」

アハハと笑うノアにため息しか出ないシンドバッド



そんな二人の元にジャーファル、マスルール、アラジンが駆け寄ってきた
「大丈夫ですか?」


「あ、久しぶりだね。ジャーファル、マスルール」

以前呼び捨てにしてくれと言われたので呼び捨てで呼ぶ

パタパタとちょっとそこでばったり会いました、というような軽い感じに手を振るノア



「お久しぶりですね。

ってじゃないですよ!貴方部下か誰がついてきていないんですか?」


「久しぶり…」

ジャーファルはそのあまりにも普通な挨拶につい返してしまったがすぐに戻り側近は居ないかと聞くのに対し、マスルールはいつもより嬉しそうに挨拶をした

嬉しいかどうが一見したら全く分からないが




「大丈夫かい、お姉さん?」
アラジンも心配そうに近寄ってきて、地面に座り込んでいるノアのお腹に手をおいて見上げる


「フフ、大丈夫だからそんな悲しい顔をしないでおくれ少年」

駆け寄ってきたアラジンの頭を笑顔で撫でてやるとアラジンも笑顔になった


「僕は少年じゃなくて、アラジンだよ。

お姉さんの名前を教えておくれよ」


「私か?私はノア・ハイゼン。
この人、シンドバッド王の友達兼家族かな」


「へぇ、そうなんだ。お姉さんってスゴい人なんだね」


ニッコリと笑うアラジンにノアは愛おしさを感じた


「それよりノア君の付き人は…「ノア様ぁぁぁああ!」…彼女みたいだね」


シンドバッドはこちらに猛スピードで駆け寄ってきている人物に視線をやった
ほかの者もこちらにやってくる人影を見やる




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