哀しみの先に

□第二章
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綺麗な青空の下の船


波に当てられ僅かに上下を繰り返す甲板の中心にノアはいた




両手を大空に伸ばし目をつむり、静かに佇んでいる

その服装は柔らかな薄い布出来ており、胸元と腰回りは包帯のようにぐるぐる巻きになって隠されている


そして普段の黒髪ではなくきらめく銀色の髪、それも床に着くほどの長い髪

木の甲板に広がる美しい銀髪


大空に伸ばす腕には白い羽がある

額には枝分かれした角が生えていた




ゆっくりと目が開かれる

その瞳は金色だった


そっとその口が開かれた
「アメリー、ハルト」


「お呼びでしょうかノア様」

どこからか姿を現したアメリーとハルト


ノアは空を仰いだまま指示を出す

「アメリー、皆に航海を急ぐように伝えて。

バルバットで義賊が暴れ回って、一般市民も巻き込み始めている。

それに煌帝国の船がバルバットに向かってきている…


…何かある。奴らの気配も感じる。


ハルト、一個小隊を用意させて。それなりに腕が立つ人選がいいな。ほかは任せる。


それが揃い次第、先に向こうに飛ぶ」


「「御意」」


二人は返事をするとすぐに船内に戻るとすぐに慌ただしくなった



そんな中ノアは一人また空に手を伸ばし仰ぐ




風が海が森が大地が声を上げるのだ


"早くここに来て"と

ノアだけにしか聞こえない自然の声、生をもっている物の声が聞こえる



この能力は金属器の恩恵

カイムの力だ


三年の間に攻略した第53迷宮カイムを攻略した


これでジンの金属器は二つ

三人目の複数迷宮攻略者になったのだった




――――――――――――――――――――――――――――


しばらく皆の声に耳を傾けていると複数の気配がしたので、そちらに目を向ける


6人の兵士をつれたハルトとアメリーが居た


「…揃ったな。

では、私たちだけ先にバルバットに向かう。向こうは恐らく戦場になっているだろう。

優先することは市民を安全なところに連れて行くこと。けが人の手当。無駄な戦いはしないように。」


ノアは袖から扇を取り出した

一見すると普通の扇だが、扇を開くと見る見るうちに大きな扇に姿を変えた


軽く20人は人が乗れそうだ


それに皆が乗るとふわりと浮き上がった


そしてバルバットに向かって飛び出す




かなりの上空を滑空するかのように滑り行く



随分な時間をとんでいた

いつの間にか太陽は沈み、月が顔を覗かせ始めていた




ノアは少し焦りだしていた

バルバットに近づく度に皆の声が悲痛なものに変わってきていた


"早く行ってあげて"
"早く助けて上げて"



だんだんと険しい顔になっていく



どうにかバルバット国内に着いた時には月が真上に来ていた



一旦兵士たちを下ろすべく地面に降りたった


「先程伝えたとおりだ。市民の安全を第一に考えて行動するように。行って!」



そういうと6人の選りすぐられた兵士は町の中に消えていった


「私たちも急ごう。あちらから禍々しい感じがする」



タンッと地面を蹴り屋根を登ると一直線でその場所を目指して駆け出した





ある程度すると広場と思わしき場所が見えてきた


青い巨人が氷で貫かれていた


そして悲鳴や叫び声、怒鳴り声が聞こえる



巨人は何かを握りつぶした


握った手が開かれ落とされる何か


それをみたノアは顔色を変え、一気にスピードを上げかけだした





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