―心なき歌姫―
□3月−入学前のレク
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加工を頼んだお骨がやっと完成したらしく連絡が入った
取りに行くと、出来上がっていた物は小指の爪ほどの大きさの石で一つは淡いピンク、もう一つは琥珀色をしていた
じーっと見つめてあるとお店の人が教えてくれた
「こちらの淡いピンク色の方がお母様で、こちらの琥珀色の方がお父様です」
「2人ともピッタリな色だな…。
すみません、この石をアクセサリーに出来ますか?」
月夜は輝く石を見つめたまま問いかけた
「はい。可能ですよ。
どのような物にしますか?」
「片耳のイヤリングにしてください。この先ピヤスにするかもしれないので付け替えが出来るようにお願いします」
「かしこまりました。10分ほどで出来るのでお待ちください」
お店の人はふたつの石をもって奥の工房へ向かった
待っている間、ふと月夜は自分の髪の毛に目をやる
毛先だけが白銀だったのが今では黒はメッシュのようになっているだけになっていた
「これはこれで良いか…。なんかカッコイいし。でも黒も捨てがたいしな…うーん」
毛先をクルクルと指先に絡め弄ぶ
いつの間にか10分経ち
工房から出てきた
「お待たせしました。こちらになります」
差し出された箱の中には、注文通りの片耳のイヤリングがあった
デザインは石に穴をあけないようにワイヤーで包み込むようになっていて、それが各々チェーンに繋がれている感じ
要は、シャンデリアのガラスを石に変えたものだ
「ありがとうございました」
イヤリングの箱を大事そうに抱え頭を下げた
「いえ、私たちはこうやって遺族の方に希望を与える仕事をやりがいにしていますから…。
こうすれば、片時も離れている感じがしないでしょう?」
「そうですね…本当にありがとうございました」
また、頭を下げ店を出た