―心なき歌姫―
□初めの始まり
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春を過ぎ、初夏に向かう頃
中3になった月夜は車の後部座席に座っていて、前に座っている二人に視線を送る
「やっと休みが取れて良かったわ」
助手席に座る女性、月夜の母は嬉しそうに目を細めて笑う
「そうだな。こうして3人で出かけるのなんて何時ぶりだ?」
ハンドルを握りながら答える父
「1年ぶりかな。
でも、お父さんもお母さんも仕事大丈夫なの?」
父と母は音楽プロデューサーと作曲家だ
そこそこ有名なプロデューサーと作曲家だ
「なぁに。心配いらないよ月夜。寧ろ、働きすぎで上から休めって言われてるくらいだから良いんだよ。
母さんはこないだ曲を作ったばかりだから、しばらくは休むつもりだったんだから」
「なぁにぃ?その言い方?私はいつも魂を込めて作るから、連続には無理なのよ」
ぷぅーと頬を膨らませ反論する母
「喧嘩はそこら辺にして、
折角のお出かけ何だし…。」
はぁと肩を竦め溜息をこぼす月夜
それからしばらくは他愛もない話をして盛り上がった
そして、何時しか月夜の将来の話になった