百合の殻

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かつかつと足音をたてながら階段を降りていく。が、これからどうしようかということは実際考えてはいなかった。
ただとりあえず、屋上にいることに飽きて、授業が始まるタイミングが丁度よかったから移動しようと思っただけなのである。
いや、確かにあの女が来たからというのもあるのだろう。それは確かに否定できない。
しかし、元々は場所を移すつもりだったのだから、彼女の登場は直接は僕の移動には関係していないのだ。

薄暗い階段で、ここにいるのは自分だけで、聞こえるのは自分が鳴らす靴音だけ。
そんな状況に、思わず寒気がする。
何か得たいの知れないものがいるのではないか、という恐怖感もあるのだが、それよりは妙な孤独感が纏わりついてくるからという理由の方が大きい。
独りでいる狭い空間とは、そんなものではないだろうか。
階段を一段下りていく毎にそのよくわからない孤独感はより一層自分の中で膨らんでいく。
その正体が掴めないためにより苛つく。
原因さえわかれば対処のしようもあると言うものなのだが、全く困ったものだ。





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