夢の世界へ2

□好みと違うなら
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他の部隊より確実に多いだろう書類を片付けた時には、すっかり日が沈んでいる。最近は、特にそれの繰り返しだった。


「…暑いなぁ」


昼間の唸るような暑さは若干緩んだ気もするが、イスに座りっぱなしだったせいでジンワリと汗が浮かんでいる。

終業時刻はとっくに過ぎていた為、廊下を歩く人はまばらで、私は書類を渡しに行くべく上司の執務室へと歩く。




「大将青雉、書類をお届けに参りました」

控え目なノックの後、徐にドアが開き「どうぞー」と間の抜けた返事。失礼します、と言って部屋へと入れば…やはり寝ていたのだろう。ソファの上にタオルケットが広がっていた。


「これが本日付けの書類です。あとは青雉さんの判を押していただければ、完成なのですが…」

「はい、お疲れ様。こんな時間までお仕事なんてマリアちゃんは偉いねー。優秀な部下を持つと、上司は鼻が高いってね」

「…だらけきった上司を持つと、自然と部下はしっかり者に育つのです」

「あらら、今日はご機嫌斜めなのかな?眉間にシワ寄せちゃって、可愛いカオが台無しでしょうが」

トン、と軽く青雉の指が眉間を弾く。

「青雉さんの分の書類が廻ってくる事に怒ってるんじゃないですよ。それは、もう慣れましたから」

「…いや、ホントすまん」

「今日は暑くって…、少し疲れただけです」

ぽつり、と小さな声で呟いた。最後の書類に判を押し終えた青雉は、ピタリとその手を止めて私を見る。

当たり前だが、青雉の頬には汗など浮かんではおらず。彼も暑いのは苦手なのだろうが、それでも私よりはずっと涼しそうに感じられた。


「マリアちゃん、暑いの?」

「…はい。昔っから暑いのは苦手で、今日みたいに蒸し暑いのはもっと苦手なんです」

本人を目の前にしては絶対言えないけれど、こんな日には大将赤犬には会いたくない。と、青雉に告げると、彼も大きく賛同してくれた。


「だよなァー。サカズキなんかに会ったら、おれ溶かされちゃうもん」

「…仕事サボってますからね。アレは愛の鉄拳です」

「ホント今日は手厳しいのね…。でも愛の鉄拳なんて、ガープさんだけで充分だわ」

「はいはい。……あ、判押し終えたなら持って行きます。今日付けなんで私から元帥に渡しておきますよ」


デスクに散らばった書類(なぜ散らかった!)を集め、早々に部屋を出て行こうとした私の腕を、ヒンヤリとした何かに掴まれた。




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