夢の世界へ

□曖昧な、この感情。
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気が付いたら朝だった、という生優しい理想はさておき。この時計は壊れているんだろうか、と首を傾げてみた。長い針が五を指して短い針は一に傾いている。


「…12時25分……」


小さく呟いてみても針が巻き戻るなんて、当たり前だがそんな親切心は無いみたいだ。それどころがチッチッチ、と人を小馬鹿にしたようなリズムで時は進んでいく。


「…無断欠席しちゃったよ!!」


勢いよくベッドから起き上がれば頭に鈍い痛みが走る。ああ、寝過ぎた私に天罰ですか!でも今は止めて下さい!今から、今からでも学校にスライディングして先生殿に深く土下座しなければァ!!


わたわたと制服に手を掛けた瞬間、ガチャリと自室のドアが開いた。




「美月?起きたの、か……」


「マ、マダラさん!ちょ、ノックくらいして下さいよ!(まだ着替えてないから良いですけど!)」


「そんな事より…制服なんか掴んで何している?」


いざ着用せん!と、されている制服を凝視するマダラさんは少し不機嫌そうだ。…って“そんな事より”って地味に傷付きますからね!


「あの、これから学校に行こうと思うんですが…」


「何故?」


「(な、何故!?)…いやあの、勉学に励みにですかね?」


「くだらんな、今日は家にいろ。俺からの用件はそれだけだ」


それだけ言って部屋から出ようとするマダラさんを(ちょ、ちょっと待ってよ!)、私は慌てて引き止めた。


「あのあの!こ、高校生が平日に学校へ学びに行く事はこの世界では常識でして!どこも具合が悪くないのに行かないというのは、世間一般でいうズル休みでして、だからその…なんていいますか、が、学校に行かせてください!」


親と子だ!まさにこれは親子の縮図を表している!具合悪いから学校休ませてくれ、と必死に懇願するズル賢い子供と、何が何でも学校へ行けと凄む親!!

勿論マダラさんが親で私が子供な訳なんですが、ひとつ間違っているのは…私が学校に行きたがっているという事実。

どの世界に学校へ行きたいと言う子供をズル休みさせる親がいようか。マダラさんの世界では百歩譲ってあるのかもしれないが、少なくとも私の世界では非常識に値するものである。


「美月、」


これだけ必死に説明すれば、勿論マダラさんは納得してくれるだろうと思っていた。というか、反対する意味が私には解りかねます!


「言いたい事はそれだけか?」


「……へ?」


「もう一度言う。今日は家に居ろ。俺からの用件はそれだけだ」


「……はい」


…なんといいますか。うちの親の凄みは、他所様の親とは比べられない程に格別だったようです。


「(恐ろしいっ!)」




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