夢の世界へ

□可愛くないね
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「何故逃げた?」


昨日越して来たばかりの新しい家。未だ強く香る畳みの匂いと、皴ひとつ無い真っ白な障子が、私に新しい一歩を踏み出す勇気を与えてくれたばかりだというのに。


「なんで来たの?不法侵入でしょ、それ」


戸を乱暴に開け、私の目の前までやって来るマダラ。その言動から彼が不機嫌だとは想像できるが…私だって最高に気分が悪い。


「帰るぞ凛音」


掴まれた手首を振り払ったが、やっぱりマダラの力には勝てないのだ。


「離してよ!私、もうマダラの事は忘れるって決めたの。そしてもっとハンサムで、誠実な人とお付き合いするって誓ったんだから!」


「勝手に決めるな誓うな。だが、お前にそんな男が出来たら瞬殺だな。いや、飢え死にするまで時空間に閉じ込めてやろう」


「とーにーかーくっ!マダラなんか大っ嫌いだって言ってんの。解ったなら出てけバカ!」


「お前は何がそんなに気に入らないんだ?説明しないと言うのなら、無理矢理にでも連れて行くぞ」


「なっ…、ふざけんな馬鹿っ!」


お前は私の気持ちを考えた事があるのか馬鹿マダラ。同棲とまではいかない、いわゆる半同棲生活を送って来た私の事を…!


いつやって来るのか解らないマダラに気を揉んで…どうしようも無く人肌恋しい時にマダラは居なくて、そうして忘れかけた頃にひょっこりと現れる。




「馬鹿マダラ、」


いい加減気が狂ってしまいそうで、私は逃げる様に家を飛び出した。


「あの家が気に入らないなら、ここに居ても構わん。だが俺は変わらずお前に逢いに来るぞ」


「横暴だし、相変わらずな物言いだよね。大体何で追って来たわけ?そんな女々しいの、マダラには似合わない」


「馬鹿かお前は、惚れてるからに決まってるだろ」


「じゃあなんで、ずっと一緒に居てくれないのよ!?」


あぁ、一体どっちが女々しいと言うのだろうか。

驚いたように目を見開いたマダラも、私の怒りを漸く理解したようで…口角を吊り上げながら握っていた手を離してくれた。


チラっと手首を確認すれば、そこだけ綺麗に変色している。馬鹿マダラ…手加減を知れ。



「お前、そうか…そういう事か」


「一人で気持ち良さそうに納得してんじゃないわよ!」


「いや、すまん悪かった。だが…クク、そうかお前は寂しかったのか」


「それで?これからは一緒に居てくれるのよね?ねぇ、これで断ったらアンタの事殺すよ?」

「凛音に殺される、か。有り得無いな」


「見下した眼で見るな。張っ倒すぞコラ」


「俺は忙しいんだが、まあ良いだろう。一緒に居てやる。だが場所は犯罪者のアジトだ…」


「……は?犯罪者のアジト?」


「アイツ等に凛音を近付けたくは無かったが、致し方あるまい。俺が守ってやるから心配するな」


「マダラ、あんた犯罪者だったわけ?」


「嫌いになったか?」


「いや、そんな事はないんだけど嫌よ?私は、マダラと二人っきりで過ごしたいわけで…グループ生活なんて無理。しかも犯罪者なんて嫌だ。断固拒否!」


「顔が嬉しそうに見えるのは気の所為か?」

「全力で気の所為だと主張します!」


何が犯罪者だ!マダラ以上に怖い奴なんて居る訳ないだろうが。そして二人だけの世界を作れば良いのだから問題ナシ!おーるOK!…マダラには恥ずかしいから絶対に言ってやらないけど。


「フ、凛音は相変わらず、」


「ウルサイ黙れ!」


「俺が何を言いたいのか解るのか?」




(そう言いたいんでしょ?)
(そこに惚れ込んだのだがな、)


フェロモン。様に提出致しました。




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